子どもの脳はどう育つ?(5)英語の会話と聞き取り 能力伸ばすには8~10歳
滝靖之(東北大加齢医学研究所教授) (2018年4月18日付 東京新聞朝刊)
皆さん、こんにちは。前回は、脳の発達は全ての領域で同時に進むのではなく、領域によって発達のピークを迎える年齢が異なっている、というお話をしました。今回は、どの領域がどれくらいの年齢の時に成長の頂点に達するのか、というお話をします。
人間は生まれると、まず脳の一次感覚野と呼ばれる領域の発達が加速します。一次感覚野とは、大脳の中で、皮膚感覚、聴覚、視覚などの感覚をつかさどる領域をいいます。これらの領域がすぐに発達する理由は、赤ちゃんは生まれてすぐにお母さんを認識する必要があるからです。
お母さんに抱きしめられたりすることで赤ちゃんの内面に起こる愛着の形成が深まれば、精神の発達だけでなく、五感の発達にもよいことが脳の観点からもいえると思います。
1~2歳は言葉を覚え、自分の周りのことに興味を持ち始める時期です。この頃の子どもたちの脳に関する研究は非常に限られていますが、恐らく、母国語や興味関心に関わる領域などが成長していると考えられます。
3~5歳ぐらいに著しい成長が見られるのは運動野です。この頃はいろいろなスポーツを始めるのにとてもよいタイミングです。意外に思うかもしれませんが、楽器演奏も「巧緻運動」といって、運動の一種になります。ピアノやバイオリンなど楽器の習い事を始めるにもよいでしょう。
英語などの第2言語の習得、特に会話と聞き取りの能力を伸ばすのによい時期は8~10歳です。言語に関わる脳の発達が最も活発化するからです。
では、思春期になると、今度は脳のどのような領域が伸長するのでしょうか。次回お話ししますね。
コメント