今年のインフルは「じわじわ増加」型…春まで流行の恐れ 子どもは重症化リスクに注意を

榊原智康 (2023年2月17日付 東京新聞朝刊)

発熱を訴える女児を診察する「五反野皮ふ・こどもクリニック」の松田健志医師(中央)=東京都足立区で(同クリニック提供)

 新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向となる一方、昨年末に流行期入りした季節性インフルエンザの患者数の増加が続いている。コロナ禍前の例年の傾向では、流行期入りと同時に急増し、ピークを迎えることが多かったが、今シーズンはじわじわと増加が続いているのが特徴だ。専門家は「流行が長く続く恐れもある」と警戒を呼びかけている。

「1月下旬からコロナより多く」

 「1月下旬ごろから、新型コロナよりもインフルエンザの患者の方が多くなった。日によってはインフルの陽性率が5割を超えることもある」と語るのは、小児科の発熱外来を設ける「五反野皮ふ・こどもクリニック」(東京都足立区)の松田健志医師だ。

 厚生労働省によると、全国の定点医療機関から今月5日までの1週間に報告されたインフルの患者数は6万2583人で、1医療機関当たり12.66人。昨年11月下旬から10週連続で増加している。

 1週間の1医療機関当たりの患者数が全国で1人を超え、厚労省が3年ぶりに「流行期」入りしたと発表したのは12月28日。その後増加が続き、今月3日には「注意報」の水準(1医療機関当たり10人)に達した。厚労省に助言する専門家組織は「例年の同時期と比べると低い水準だが、直近2年間よりは高くなっている」と分析する。

 都道府県別では沖縄(47.18人)と福井(35.46人)が警報の水準(1医療機関当たり30人)を超えた。首都圏では神奈川(12.74人)が最多で、千葉(10.45人)、東京(9.81人)、埼玉(8.30人)などとなっている。

都内2校が休校、12校で学級閉鎖

 コロナ禍の過去2年は流行しなかったため、インフルへの免疫が低下していることなどが、今シーズンの流行の背景にあるという。子どもの間でも感染が広がっており、休校や学年閉鎖、学級閉鎖となる学校も全国で増加が続く。都内では5日までの1週間で2校が休校、12校が学年閉鎖となった。

 松田医師は、小児はまれに急性脳症を起こし重症化する恐れがあると指摘。家庭内感染も多くなっているとし「感染者が出たら、過ごす部屋を別にしたり、換気を十分にしたりするなどの対策を」と注意を促す。

昨年の米国に類似 4~5月まで

 インフルエンザに詳しい菅谷憲夫・慶応大客員教授は「例年だと1月中旬から下旬にかけてピークとなることが多かった。今シーズンはこれまでにない流行の仕方になっている。ただ、米国では昨シーズン、こんな形でじわじわと増え続け、流行は4~5月ごろまで続いた」と指摘する。

 例年と異なる流行になっている理由については「ウイルス干渉」の可能性を挙げる。あるウイルスが流行していると、別のウイルスの流行が抑制される現象で、世界でもコロナが猛威を振るう中、同様な流行の傾向が見られた地域があるという。

 一方、政府は、コロナ対策として推奨してきたマスク着用のルールを3月13日から緩和する。菅谷氏は「インフルの流行が春先まで長引く恐れがある。マスクのルールが緩和されても、インフル感染などを警戒し、すぐに外さない人も多いだろう」とみる。その上で「インフルは小児に加え、肺炎を併発することがある高齢者も重症化リスクが高い。感染が心配な人は、今からでも遅くないのでワクチン接種も検討してほしい」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月17日