保育大手グローバルキッズが公費不正受給 保育士を水増し報告、都内で1600万円 本部が関与認める
認可・認証16施設で職員名簿などを偽造
グローバルキッズは2006年の創業で、首都圏を中心に認可保育所など161の保育施設のほか学童クラブなどを運営。2016年に持ち株会社が東証マザーズに、今年4月には東証プライム市場に上場している。
グローバルキッズなどによると、不正があったのは2015年4月~2019年12月で、豊島区、大田区など都内8区の認可保育所11施設と認証保育所5施設の計16施設。実際より多い保育士らが配置されているように見せ掛けるため、職員名簿や出勤簿を偽造し、各区に報告。区側はこれに基づき運営費を支給していた。
豊島区の指導検査で発覚「組織的で悪質」
豊島区が昨年7月の指導検査で不正に気づき、都が今年1月から同社の104施設に検査を実施して発覚した。5施設で延べ27カ月分の不正があった豊島区は、過大支給分を約732万円と試算。大田区でも約327万円の不正が判明した。
返還請求は現在、計5区で金額は約1598万円に上る見通し。今後さらに増える可能性がある。都の担当者は「組織的、意図的に事実と異なる名簿を提出していたケースで、悪質」としている。
保育士「名義貸しは暗黙の了解だった」
水増しした名簿には、グローバルキッズ本部職員計19人の名義を借用していた。同社は「本部が関与して書類を偽造した。施設の急増と保育士の採用難の中で、名簿や出勤簿など形式のみを整えてその場をしのぐという、誤った認識があった」と説明。社内調査では、都外の施設1カ所でも虚偽報告した可能性があるといい、職員教育など再発防止に取り組むとしている。
同社の保育所で勤務経験のある保育士は「人手不足が常態化している園では、名義貸しは暗黙の了解だった。施設を新設する中で、既存の保育所が大事にされていない感じがあり、辞める人もいた」と明かした。
氷山の一角か 背景に行政の不十分な検査 人件費を抑える「弾力運用」の問題も
都の実地調査、2020年度は4%
国や自治体が運営費を支給する認可保育所は原則、都道府県による年1回以上の実地検査が義務付けられている。だが東京都が実地検査を行ったのは、約3000施設ある認可保育所のうち2019年度で8.0%、コロナ禍の2020年度は4.3%にとどまった。
担当職員の不足などが原因とされる。区市町村にも実地検査の権限はあるが、今回の不正発覚の端緒になった豊島区でも2年に1回程度という。
待機児童問題で強く出られない?
小林さんは「検査が入れば、不正はもっと発覚する可能性がある。ただ、待機児童対策を優先する行政が保育所の撤退を恐れ、強く出られないケースもあるのではないか」と話す。
また運営費は、人件費に充てる部分を抑えてほかに流用できる「弾力運用」の問題もある。国は運営費の約8割を保育士らの人件費と想定するが、事業者が保育士の賃金を低くとどめて、事業拡張などに資金を回す例も少なくないという。小林さんは「労働条件が悪いと保育士が定着せず、人手不足から同じような不正は今後も起こりうる」と警鐘を鳴らす。
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