園バス置き去り 静岡県が保育施設232カ所の立ち入り調査開始 来年度は抜き打ち指導も検討

足達優人 (2022年9月29日付 東京新聞朝刊)

運転手が行っているチェック表を確認する県職員(右)=磐田市の福田こども園で

 牧之原市の通園バス置き去り死亡事件を受け、静岡県は27日、送迎バスを運行する県内の他の保育施設の立ち入り調査を始めた。232施設が対象で、11月中旬に完了する見込み。

乗降時の人数確認などをチェック

 立ち入り調査に先立って、県や静岡、浜松両市は、調査対象の施設からバスの乗降時の人数確認の方法などについて、書面で回答を得た。立ち入り調査では回答と照らしながら、実際の人数確認をどのように実施しているかなどをチェックする。

 27日は、県こども未来課職員が磐田市の認定こども園「福田(ふくで)こども園」を訪問。榛葉(しんば)一恵園長やバス乗務員らに、園作成の運行マニュアルに基づいた乗降時の園児の名簿確認や点呼の手順、事件を受けてマニュアルに付記した注意事項などを確認した。

10月中に運行管理の手引を策定へ

 榛葉園長は「降車後に園内に園児を誘導しながら名簿チェックするのは難しい」とした上で、園児全員が玄関に入ったことを確認した後、再度乗務員がバス内を見回ったり、靴箱を確認したりすることで二重、三重に人数確認していることを、同課の鈴木安由美(あゆみ)課長らに説明。鈴木課長は「マニュアルには場面ごとに必要最低限な内容を記載するのが望ましいと思った」と説明。「書面に書かれたことが園内でどう共有され、関係者が安全管理を徹底しているのか、引き続き確認したい」と述べた。

 静岡県は10月中に、各園で作成する通園バスの運行管理マニュアルの手引「安全管理指針」を策定する。

抜き打ちも検討 指導内容は公表へ 

 牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で園児(3つ)が通園バスに置き去りにされ死亡した事件を受け、静岡県は来年度以降、保育施設などへの抜き打ち指導や安全管理体制の確認に特化した助言指導の実施を検討していることが、県への取材で分かった。

定期監査は2週間前に事前通告

 静岡県は、保育所や認定こども園に対し年1回、運営基準に基づいた人員配置かどうかや危機管理マニュアルの整備状況などを調べる定期監査をしている。通常は2週間前に施設側に監査の実施を事前通告し、必要事項を書き込んだ資料の提出を受け、現地で調査する。

 事件を受け、県は従来の監査に加えて、バスの運行管理など安全管理体制に特化した助言指導や、事前通告なしの抜き打ち指導を実施し、安全対策を強化することを考えている。

 これまで県は各施設で福祉関係の法令違反が確認されれば、監査後に改善指導事項を公表してきたが、今後は助言指導した内容も公表し、改善を徹底させる方針。