保育園で「おむつのサブスク」広がる 保護者は補充も記名も不要 園と業者が契約、保育士の負担も軽減
「荷物が少なくなって楽になった」
「おむつを補充する手間がなくなったのが一番うれしい」。3月半ばの午後6時ごろ、愛知県豊田市の寺部こども園。娘の藍梛(らな)ちゃん(2つ)を迎えに来た杉本槙子さん(35)が笑みを浮かべた。
豊田市では昨年11月から、市内の公立こども園で紙おむつのサブスクのサービス「手ぶら登園」を無償で試験的に導入。今年1月には有償での利用に切り替えた。同園では現在、乳児クラスの55人のうち、7人が使っている。
利用を始めるまで、園に子どもを迎えに来る杉本さんのかばんは、おむつがはみ出して落ちてしまいそうなほどふくらんでいた。1日に使う5枚ほどを毎日持参して棚に補充。帰宅後には翌日以降の分に名前を書く作業も必要だった。
おむつ以外に、マットや布団など園に持っていく荷物は多い。共働き家庭で、フォトグラファーとしてフルタイムで働く杉本さん。「荷物が少なくなって楽になった。少しでも負担が減るのは大きい」と喜ぶ。
忙しい送迎の時間に生まれる余裕
保護者がおむつに費やす時間が減れば、忙しい送迎の時間に多少の余裕が生まれる。保育士とのコミュニケーションが増えれば、預ける保護者の安心感にもつながりそうだ。4月に入園する乳幼児クラスの園児は、過半数がサブスクを使う見通し。乳児クラスを担当する保育士の長谷川由佳里さんは「おむつの枚数の確認作業が減り、子どもと向き合う時間が増えるのでは」と期待する。
「手ぶら登園」は子育て支援事業を手がけるベビージョブ(大阪市)が2019年に始め、全国で3300以上の施設が導入。利用料は紙おむつのブランドによって異なり、2508円か3278円。おむつとおしりふきを必要なだけ使える。当初は私立保育施設での利用が多かったが、最近では公立で増えているという。保護者がより楽になるように、オプションで食事用の紙エプロンと手口ふき、簡易ベッド用の使い捨てカバーも提供する。
「使用済み」の持ち帰りにも変化
園で使った紙おむつの取り扱いも変わってきている。従来は保護者が持ち帰り処分することが多かったが、厚生労働省は1月、施設での処分を推奨する通知を自治体に出した。保護者の負担軽減に加え、園でも1人ずつのおむつを管理する必要がなくなり、負担が減らせることなどが理由だ。
ベビージョブが今年2、3月に公立保育施設がある全国の自治体に聞いた調査では、おむつを持ち帰らせている園がある市区町村は28%で昨年同時期から11ポイント減少した。保護者からの要望や厚労省の通知を受け、園での廃棄に切り替える自治体が多いという。
一方、持ち帰りの理由に子どもの体調管理やトイレトレーニングの進み具合の確認などを挙げる自治体もある。