勉強しなかった親は、子どもに勉強しなさいという権利はないのか〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
2学期が始まって1カ月。次男の夏休みの宿題は、いまだ3ページを残したまま忘れ去られようとしている。
長男の中間テストの結果がかえってきた。点数を見て、もう少し勉強を頑張るように言うと、「でも、パパの方が全然宿題も勉強もしなかったんだよね?」と言ってきた。正直に話せばいいってもんじゃなかった。
僕は父親から、「勉強なんかしてもしゃーない。その代わり、明日みんなを笑わすおもろいこと一つ考えて学校いけ」と昭和の芸人談のようなことを言われて育った。「勉強なんかしてもしゃーない」の方だけを小学生の僕は喜んで採用した。
「だったら聞くけど、勉強してこなかった親は、子どもに勉強しなさいという権利はないのか?」「そりゃダメだよ。だってやってなかったんだから。人のこと言えないよ」。ここぞとばかりに次男が横から入ってきた。「じゃあ、お父さんみたいな不安定なフリーランスにでもなる気か?」とびびらせる。
「でも結構稼いでるんでしょ?」と長男。「いや、結構は稼いでない」と声が小さくなる。「でもさ、全然勉強しなかったのに、家族が生活できてるんだからすごいよ」と慰められた。複雑な気持ちだ。
82歳の誕生日に父に電話をした。孫に「勉強頑張りや」と父は言っていた。
急に寒くなって、子ども全員風邪をひいた。熱を出して寝ている子どもを見ていて、おもわず妻に「こんなかわいい子4人も産んでくれてありがとう」と言うと、「ありがとう。種付けしてくれて」と妻が言った。結婚15周年を迎えた。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。13歳、10歳、6歳、3歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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