余った食品、生活苦しい育児家庭に配布 埼玉で広がる「フードパントリー」 川口市で新たに2カ所

近藤統義 (2019年9月5日付 東京新聞朝刊)
 企業などから余った食品を集めて保管し、生活に困っている子育て家庭に無料で配る「フードパントリー」の取り組みが、埼玉県内で活発になってきた。県が昨夏から保管拠点の見学ツアーを実施。その参加者が今月、川口市内で新たに2カ所のパントリーを始める。行政と民間の連携から支援の輪が広がろうとしている。

フードパントリーを新たに始める池田さん(右)と牛坂さん=埼玉県川口市で

子ども食堂も営む池田さん「直接的な支援したい」

 新たなパントリー2カ所は、教会を運営する池田忠正さん(54)が6日、主婦牛坂奈津子さん(55)が15日にそれぞれ始める。フードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)」(東京)からレトルト食品や飲料などの提供を受け、事前に申し込んだひとり親家庭などに配布する。

 池田さんは子ども食堂を毎月開き、地域での子どもの居場所づくりに努めている。ただ、「本当に生活に困っている家庭へのアプローチに課題を感じていた」。解決策を求め、3月に2HJの説明会に参加。「パントリーなら直接的な支援ができる」と考え、準備を進めてきた。

母子家庭出身の牛坂さん フードロス問題にも関心

 一方、牛坂さんは数年前から食品ロス問題に関心を深め、2HJの活動を知った。自身も母子家庭で育ち、苦労した経験を踏まえ「パントリーが身近にあれば、ひとり親は助かるに違いない」と思い立った。

 ネックになりやすい食品の保管場所は、池田さんが子ども食堂の会場に、牛坂さんは夫が経営する学習塾の一室に確保できた。いずれも既に10世帯ほどから申し込みがあり、今後は2カ月に1回のペースで配布する。農家から野菜の寄付も募りたいという。

子ども食堂や奨学金情報、学習支援にもつなげたい

 「パントリーを通してつながった家庭に、子ども食堂や給付型奨学金など支援の情報も伝えていきたい」と池田さん。牛坂さんは「学習塾での開設という特性を生かし、いずれは学習支援もできる居場所にしたい」と意気込んでいる。

 問い合わせは池田さん=電話080(3463)6635、牛坂さん=電話090(7281)6795=へ。

県は食品保管所の見学ツアーを実施 開設したい人たちを後押し

 県によると、県内には現在、子育て家庭の支援を目的としたフードパントリーは少なくとも越谷、加須、深谷、朝霞各市に計4カ所ある。食品の提供で協力する2HJは20カ所程度の開設を目指しており、活動を後押ししようと県が昨夏から企画しているのが食品保管場所の見学ツアーだ。

食品が保管された倉庫を見学するツアー参加者たち=八潮市で

 8月末にあった4回目のツアーでは、約20人が八潮市内の2HJの食品倉庫を訪れた。段ボール詰めの菓子などが並び、冷蔵庫や冷凍庫もある。「この活動がなければ、全部捨てられていたはず」とスタッフの坂本瑶子さん(37)が説明する最中にも、パンやバナナが運び込まれた。

 「安全や衛生面を第一に気を付けているのが分かった」。さいたま市内で今秋、パントリーを始める予定の女性(46)はイメージを膨らませた。川口市の池田さんと牛坂さんも7月のツアーに参加し、開設に向けてノウハウを学んだ。

 一方、県福祉部の内田貴之企画幹は「やる気はあっても、食品の保管場所と配布する人手の確保が壁になっているケースもある」と指摘する。そのため、県が立ち上げた「こども応援ネットワーク埼玉」は、保管場所を探している人と貸したい人との仲介支援もしている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年9月5日