民放初!赤ちゃんのための番組 テレ東「シナぷしゅ」 きっかけは子育て中の女性プロデューサーの「罪悪感」
「ママのお仕事は…」胸を張って言いたい
「『テレビは赤ちゃんの発達に悪い』とまことしやかにささやかれていて、赤ちゃんにテレビを見せない風潮がなんとなくある。安心して、罪悪感なく見せられるような番組が作れたら」-。企画を発案した飯田佳奈子プロデューサー(31)は狙いをこう語った。
昨年、男児を出産し、自然と子どもにテレビを見せようとしていない自分に気付いた。「子どもが小さいうちは『ママのお仕事はテレビのお仕事なんだよ』って胸を張って言えないのかな?」と気になった。営業職が長くプロデューサーの経験はなかったが、産休明けに企画を提案した。赤ちゃんの発達や認知を研究している東京大赤ちゃんラボからの監修を取り付け、趣旨に賛同する子育て中のプロデューサーら4人の協力も得て動きだした。
ビジネス的に対象外のはずが…CM枠が完売
タイトルの「シナぷしゅ」の由来は、脳の神経細胞同士のつなぎ目の「シナプス」。子どもにいろいろなアイデアが「ぷしゅぷしゅ」とわき出してくるイメージと、親の肩の力が「ぷしゅーっ」と抜けるような番組を目指す意図も込めた。
放送前から企画の手応えを感じている。通常、新しい特番はセールスに苦しむが、シナぷしゅはおもちゃ会社や製薬会社などのスポンサーが付き、番組内容が固まっていない放送の1カ月以上前に4つのCM枠が完売した。
赤ちゃん向け番組は、NHKEテレの「いないいないばあっ!」があるが、民放で同様の番組はなかった。それは「視聴率の分類」のためとみている。性別と年齢別に調査される視聴率の指標は、最も若い「C層」でも4歳以上。「視聴率でビジネスをしている民放が、対象外をターゲットにした番組を作るはずがなかった」。しかし「(テレ東は)ユニークな会社なので、誰もやったことがないことはチャレンジした方がいい、と背中を押された」という。
飽きさせない工夫 松丸友紀アナのダンスも
番組は25分間。オリジナルのアニメやクイズ、松丸友紀アナウンサーが振り付けたダンスなど、赤ちゃんが飽きないように2分程度のコンテンツを組み合わせる。現行番組の「朝の!さんぽ道」のレギュラー制作費から新番組の費用を捻出するため、アニメの筋書きやダンス曲の歌詞は手作りし、スポンサー名の読み上げは、プロデューサーの子どもにやってもらうなど「総力戦」で手掛ける。
飯田プロデューサーは「息子に見せることが本当に楽しみ。ただそれだけを考えながら頑張っている」と笑う。放送後は、YouTubeなどに動画を無料公開し、世界中で見られるようにするという。