〈スマホと子ども〉幼児あやす”道具”として便利だけれど…

(2017年7月7日付 東京新聞朝刊)
 生活に欠かせない道具になったスマートフォン。外出先で子どもが泣きやまないときに見せると、おとなしくなってくれるなど、親にとっては心強い子育てアイテムの一つでもある。しかし、小さい子どもにスマホを使わせることに不安や後ろめたさを感じる親も多い。スマホがこれだけ生活に入り込んだ時代、子どもにはどう付き合わせたらよいだろうか。

今やスマホは子どもにとっても生活に欠かせないツールだ

病院待合室で子どもをおとなしくさせたくて…

 名古屋市の母親(37)が、三女(2つ)に初めてスマートフォンで動画サイト「ユーチューブ」を見せたのは約1年前、病院の皮膚科の待合室でのことだった。三女は約30分の待ち時間にじっとしていられず、走り回ったり泣きわめいたり。すると、近くにいた年配の女性がイライラした様子で、にらみつけてきた。

 慌てておとなしくしてくれる方法を考え、スマホで動画を見せると、三女は座って画面に見入ってくれた。「心底ほっとした」。それまでは「スマホを使わせるのはまだ早い」と思っていたが、以来、家事などで手が離せない時にはスマホを三女に使わせるようになった。「スマホのおかげで助かっている。私にも子どもにも、なくては困る物」と母親は話す。

6歳では7割以上が「見せたことがある」

 ヤフーなどネット関連業者や研究者でつくる「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」(東京)は昨年10月、ゼロ~6歳の子どもを持つ保護者1149人に「スマホ育児」の実態を調査した。「子どもがスマホやタブレットなどの情報機器を利用したことがある(見せたことがある)」と回答した人を子どもの年齢別に見ると、ゼロ歳は21.8%、3歳で60.3%、6歳で74.2%だった。頻度は「毎日」「ほぼ毎日」を合わせると半数を占めた。

刺激的な情報次々…ダウンロード繰り返し

 「自分も子どものころファミコンのゲームに夢中になった。息子がスマホ依存にならないか心配」。三重県桑名市の母親(37)は言う。長男(4つ)がスマホを使いだしたのは二歳のころ。夫(46)がスマホのゲームで遊んでいたところ、画面をのぞき込み「僕もやりたい」と言い出したのがきっかけだった。

 指で画面をなぞると絵が描けたり、人気アニメのキャラクターが登場したりする幼児向けゲームアプリをダウンロードしたところ、動画を再生する方法や数字を自然と覚えた。

 スマホは、子どもに次々と刺激的な新しい情報を与え続ける。別のアプリの広告が画面に表示されると、長男は「これやってみたい」とせがむ。常にダメとは言えず、ダウンロードを繰り返す。母親は、車での移動中などなるべく外出時にしか使わせないように気を付けている。それでも、これでいいのだろうかと時折思う。

気になる祖父母世代の視線

 「多くの親は、子どもにスマホを使わせることを後ろめたく思っているんです。祖父母世代には快く思わない人が多いから。でも、私たちもテレビに子育てを助けてもらってきた」。保育園や幼稚園でネットの安全利用について講演している静岡県焼津市のNPO法人「イーランチ」理事長の松田直子さん(56)は言う。

 電車の中などで子どもが泣くと、親は冷たい目で見られる。泣きやませようとスマホを見せると、今度は「あんな小さい子に」と白い目を向けられることもある。他の物をと思っても、子どもが飽きずに興味を示してくれて携帯しやすいとなると、スマホを上回る物はなかなかない。

 「子どもにスマホは絶対ダメと言って、親を追い詰めてはいけない」。松田さんはそう感じている。「大切なのは親が自分で利用時間などのルールを作り、それを守ること」

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