「こんなときはマスク不要」「ぬれた手に注意」「換気より基本を」夏本番のコロナ対策 感染症内科の医師に聞きました

酒井大二郎 (2020年7月29日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 新型コロナウイルスの新規感染者数が、東京で連日のように200人を超え、他の地域でも感染拡大が広がっている。気温が高くなる夏、日常生活ではどんな備えをすればいいのか。浜松医療センター(静岡県浜松市)の院長補佐で感染症内科部長の矢野邦夫医師=写真=に話を聞いた。

ポケットのハンカチは清潔とは言えない

 -感染を防ぐために気を付けるべきことは

 ウイルスは目や口、鼻から体内に侵入する。多くは飛沫(ひまつ)や手指を介して感染するが、皮膚から吸収されることはない。

 バスなどで手袋をしている人がいるが、手袋の表面にもウイルスはつくのであまり意味はない。普段は素手で過ごし、こまめにアルコール消毒する方が効果がある。

 ぬれた手は病原体を伝播(でんぱ)させることも覚えておいてほしい。トイレの手指乾燥機を使用不可とする店も多いが、それなら使い捨てのペーパータオルを準備すべきだ。ハンカチはバッグやポケットに入れている時点で清潔とは言いきれない。むやみな乾燥機の停止は感染対策上マイナスだ。手洗いとアルコール消毒の併用は必要ない。手荒れの原因となる。

周囲2mに人がいなければマスクは不要

 -夏場のマスクの着用における注意点は

 マスクは飛沫を飛びにくくして、人に病原体を伝播させないために使うもの。飛沫が飛ぶ可能性がある周囲2メートルに人がいなければマスクをする必要はない。夏場に心配されるのは熱中症。人がまばらな時の散歩や家で一人でいる時は外して構わない。着用のタイミングを考えてほしい。

 結核対策などに使う高性能マスクを着けている人がいるが、結局マスクの表面にウイルスはつくので、それに触った手で口や鼻に触れば意味はない。おすすめしない。

換気よりも「マスクと手洗い」を徹底

 -疑わしい症状があったり、PCR検査の結果待ちをしている人が身近にいる場合、在宅時の対策は

 可能であれば、疑わしい人は別の部屋で過ごすべきだ。高齢者や基礎疾患のある人を徹底的に守る意識は必要。ドアノブなどよく手で触れる場所は1日に2回ほど、消毒薬や家庭用洗剤を薄めたもので清掃する。吹き付けるだけではだめで、接触時間が長くなるようゴシゴシとこする必要がある。食器や衣類は通常の洗剤で洗えば十分だ。

 換気は1時間に1、2回で十分。過度の換気でクーラーが効かなくなると、熱中症の心配がある。

 -本格的な第二波から身を守るためには

 マスクをきちんと着けたり、手を清潔に保つなど、基本的な感染対策を徹底することが必要だ。感染経路を考えれば対策はマスクの着用と手洗いでほとんど問題ない。換気ばかり気にして、手洗いなどがおろそかになってはいけない。

矢野邦夫(やの・くにお)

 1955年、名古屋市出身。名古屋大医学部卒。感染症の治療や院内感染対策が専門。主な著書に「救急医療の感染対策がわかる本」「感染対策ルールブック」などがある。