「食費を抑えないと…」コロナ禍でひとり親家庭の苦境が表面化 厳しい現状をきっかけに、今こそ食料支援の輪を
横浜市で月10回以上、60世帯に 社協も食料配布
「いつまでコロナの流行が続くか分からず、出費を抑えざるを得ない」。ひとり親を対象にした横浜市の食料支援を受ける今坂智子さん(55)=同市旭区=は厳しい現状を訴える。パートとして働く広告代理店での出勤日は半分ほどに減った。休業手当は出ているが、先行きには不安が付きまとう。そんな時に「誰かがこっちを向いて応援してくれていると思える」。
横浜市は8月から市内で月10回以上配布を続ける。上限は各回60世帯で、来年3月までの方針だ。同様の支援は横浜市社会福祉協議会も行う。7〜9月、500世帯に10日分の食料を宅配。第2弾として今月27日まで750世帯分の申し込みを受け付けている。
フードバンクへの寄付は増加 営業自粛の飲食店も
これらの活動の原資にもなっている食料寄付も増加傾向にある。横浜市に食料を仲介する「フードバンクかながわ」(同市金沢区)への4〜9月の寄付は、昨年同時期比で2倍超の106トン。全国フードバンク推進協議会(東京都)が加盟する全国38団体に実施したアンケートでも約7割が「増えた」と回答した。
フードバンクかながわの藤田誠事務局長は「飲食店や小売店の営業自粛で食品を余らせた企業から寄付が続いた」と解説する。一方で「ひとり親はもちろん、収入を失った学生からも助けを求める声がそれ以上に出ている。余裕はない」とも訴える。
遠慮や恥ずかしさから、声を上げられない人がいる
表に出ていない訴えを指摘する声もある。横浜市社会福祉協議会の担当者は「普段から頻繁な問い合わせはないが、配布の受け付けを始めると申し込みが続く。声を上げられない人がまだまだいると考える」。市の事業を利用する30代女性も「遠慮や恥ずかしさから、声を上げにくい気持ちは分かる」と明かす。
こうした現状を踏まえ藤田事務局長は「これまでもいた食の足りない人が、コロナであらわになってきた。支援は広がってきたが、十分ではない。寄付や配布などそれぞれができることをしてほしい」と話した。
食料配布の申し込みは、横浜市母子寡婦福祉会と横浜市社会福祉協議会のサイトで受け付けている。