「復興を確かめ、笑顔に会いたい」被災地を訪問し続ける高校生の思い 10年の節目も宮城・山元町へ

梅村武史 (2021年3月8日付 東京新聞朝刊)

被災地への思いを語る小林夏実さん=足利市の市民活動センターで

 栃木県足利市在住で群馬県前橋市の共愛学園高校に通う小林夏実さん(17)は東日本大震災で被災した宮城県山元町を2014年から4度、訪れている。子ども劇団員だった10歳の時、同地でチャリティー劇を演じたのがきっかけで、被災地への思いは強まる一方だ。10年の節目の今年、5度目の訪問を計画中で「復興していく姿を自分の目で確かめたい。笑顔に会いたいと願って足を運びます」と話す。

10歳で初訪問 校舎のがれきにショック

 太平洋沿岸にある山元町は津波で町域の4割が浸水し、637人が亡くなった。大震災から3年後の2014年、足利市立山前小4年だった小林さんは、市内の子ども劇団「ドリームワールド」の一員として訪れた。足利市を拠点に活動する復興支援団体「足利風(ふう)」の呼びかけだった。

 創作劇「Little earth story~地球(ほし)の子」は、被災地の人々を和ませた。最年少だった小林さんは、子どもだけに見える地球の子役を演じた。

「地球の子」を演じた10歳の小林夏実さん(右)

 初めて訪れた町で、見るもの触れるもの、すべてショックだった。児童ら90人の命を守った中浜小学校の校舎はがれきであふれ、何もない更地が以前は駅だったと聞いた。

被災者のいま 若い世代から発信したい

 あっと言う間に家族が津波にさらわれた町民の話に心が揺れた。「お別れする時間もない。大切な人が突然消えてしまうなんて。もし私だったら…」

 翌年にラジオ朗読、翌々年は花植えのボランティア、そして14歳のときは家族とともに山元町を訪問した。母みゆきさん(59)は「夏実の強い希望だった」と振り返る。

 計画中の5度目の訪問で被災地のいまを伝える写真と被災者の声をまとめ、学校で発表するのが目標だ。「自然災害の恐ろしさに福島の原発の問題もある。震災を風化させないために私たち若い世代がもっと考え、発信していくべきだと思う」と話した。

劇を手掛けた足利の支援団体、11日まで企画展

 「足利風」主催の企画展「東日本大震災10周年展~風化させないために~」が11日まで、足利市相生町の市民活動センターで開催中。被災地の写真やパネル、新聞切り抜きなど約50点を展示、東北の被災地を150回以上訪れてボランティア活動を続ける鈴木光尚(みつなお)代表(73)が解説する。問い合わせは足利市民活動センター=電0284(44)7311=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年3月8日