横須賀市「子どもの権利を守る条例」成立 施設出身者やシェルター入所者も支援、18歳未満に限定せず
石原真樹 (2022年4月5日付 東京新聞朝刊)
神奈川県横須賀市議会は、保障されるべき子どもの基本的人権を明確化し、市や保護者らが果たす役割などを定めた「子どもの権利を守る条例」を賛成多数で可決した。神奈川県内では川崎、相模原、鎌倉各市に続いて4例目で、対象とする子どもの定義を18歳未満に限定しないことや、虐待防止に関する条項を手厚くしたことなどが特徴。7月1日から施行する。
神奈川で4例目 全21条、7月1日施行
条文は全21条で、「命が守られ、愛情と理解をもって育まれる。虐待やいじめなどあらゆる暴力を受けない」(第3条)、「自分の意思を自由に表現し、尊重される」(第5条)など子どもの権利を明示。権利を保障する責務が保護者と市、学校等、地域、事業者にあるとし、市は子どもに関する施策を推進しなければならないと定める。条例違反への罰則はない。
児童福祉法では「児童」の定義は18歳未満だが、市条例では子どもを「18歳未満の全ての者及びそれらの者と同等に権利を有する者」と位置づけた。市内の児童養護施設のヒアリングで、18歳になって施設を退所した子が頼れる実家がなく苦労するケースがあるとの指摘を受け、18歳に達しても対応すべきだと考えて盛り込んだという。
大学生が生活保護を受けられない現状
横須賀市では昨年、家庭での虐待から逃れて市内の民間シェルターに入った大学生が、生活に困窮して生活保護を受給するために退学を迫られる事例が発生。条例に先立ち、自立援助ホームに入所する大学生らに生活保護と同等の生活費を支給する独自事業を本年度から開始した。
虐待及び体罰について定める第13条は9項目。全ての市民に虐待と体罰を禁止するほか、市に対しては虐待防止や早期発見、子育て家庭の支援、虐待の連絡があった場合の迅速な対応などの取り組みを求める。
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