埼玉・鴻巣の「ともだち文庫」 地域の子どもたちに絵本を手渡し40年 褒章受章に喜び

渡部穣 (2022年4月28日付 東京新聞朝刊)

山川代表(左から2人目)ら「ともだち文庫」の皆さん=鴻巣市で

 2022年春の褒章受章者が発表され、埼玉県関係者は社会奉仕に従事した緑綬に2団体、業務に精励した黄綬に5人、公共の利益に尽力した藍綬に15人が選ばれた。このうち、子どもと本の触れ合いの場をつくる活動を続け、緑綬褒章を受章した鴻巣市の奉仕団体「ともだち文庫」の皆さんに、喜びの声を聞いた。

1980年、地域の母親たちが設立 

 「ともだち文庫」は1980年の設立。近くに図書館がなかった鴻巣市箕田地域の子どもたちに、本との出合いや本を読む喜び、楽しみを味わってもらおうと、地域の母親たちが立ち上げた。代表の山川佐知江さん(54)は「長年の活動が認められてうれしいが、いただける褒章のあまりの大きさにびっくり」とはにかんだ。

 自治会の集会所を借りて月に2回、本の貸し出しを行い、うち1回はお話し会や読み聞かせをしている。ほかに春の折り紙教室や、七夕とクリスマスの小物づくりなどイベントも開く。現在の中心メンバーは50~70代の女性8人で、1、2歳の幼児から小学校高学年の子どもたちが利用している。

 「『きょうは何を借りようかな』と本を選ぶ子どもたちの、うれしそうな顔を見るのが何よりうれしい」。山川さんは、20年あまりにわたり活動に関わる喜びをそう語る。「心に残る本との出合いは、子どもの心を豊かにしてくれる」

良い本、子どもをワクワクさせる

 3000冊以上ある絵本や児童書の大半は図書館から譲り受けたり、社会福祉協議会や民間企業からの助成金と寄付を元に購入したもの。悩みは利用者が減っていることで、かつては子どもたちが200人ほど集まったこともあるが、最近は30人ほどという。

 少子化や趣味の多様化など理由はさまざまだが、初期から活動している大熊永子さん(75)は「最近はスマホやゲームなど子どもの楽しみはいっぱいあるが、良い本は、いつも子どもをワクワクさせ、想像力をかき立てる」と読書の魅力を力説した。

 新型コロナウイルスの感染防止のため現在は活動を休止しており、6月の再開を目指して準備中。活動メンバーも募っている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年4月28日