食品ロス削減を訴える荒川区発の絵本「あらペンのおねがい」 区内の4・5歳児に配布
小形佳奈 (2022年6月10日付 東京新聞朝刊)
子どもたちに食品ロスの削減を呼びかけるオリジナル絵本「あらペンのおねがい」を荒川区が作った。区の依頼で制作を手がけた区内在住の絵本作家、松田奈那子さん(36)は「世界で起きている問題について、絵本を通じて身近に感じてもらえたら」と話す。
あらかわ遊園や都電荒川線も登場
物語では主人公の幼児がペンギンのぬいぐるみ「あらペン」に乗って空を飛び、温暖化の影響に苦しむ動物たちを見て回っては、食品ロスの削減が地球を守ることにつながることを学んでゆく。あらかわ遊園や都電荒川線など荒川区民になじみ深い風景も挿絵に登場する。
松田さんは、季節の変遷の中で生きる雪虫を描いた「ゆきのようせい」などの絵本や、障害のある女性と男子大学生との純愛がテーマのアニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」(2020年公開)の劇中画などを手掛けてきた。
今回の制作では区内の保育所に足を運んで取材した。食事風景を見学し、子どもが苦手なメニューやその理由、好き嫌いをする子にどのように声がけをするのかなどを聞き取った。
絵本の中の説明文やせりふも、子どもが理解しやすい表現になるよう保育士から助言を受けた。保育の様子を撮った写真を参考に、主人公たちが過ごす保育室の内装や給食風景を描いた。「編集者の仕事を今回は保育士さんたちがしてくれた」と松田さん。校正は区立尾久図書館の職員が、印刷も区内の業者が担当し「まるまる荒川区で作った絵本です」と笑顔を見せる。
荒川区は4800部を印刷し、区内の保育園や幼稚園に通う4、5歳児に配る。区立図書館や子育て交流サロンでも閲覧できるようにする。読み聞かせ動画を荒川区のサイトで公開している。