賞味期限内でも廃棄するヨーグルト、輸送中に傷つくカップ麺 食品ロス減×子ども支援 埼玉で広がるフードパントリー
雪印メグミルク川越工場が「有効活用」
「賞味期限は十分残っているのに、捨ててしまうなんてもったいない」―。2020年秋、埼玉県川越市内の雪印メグミルク川越工場で廃棄処分されるカップ入りヨーグルトやプリン、ゼリーを見た社員が、何とか有効活用できないかと声を上げた。
食品業界では賞味期限とは別に、製造日から賞味期限までの「3分の1」以内に出荷しなければならないという慣例がある。メーカーは不足がないよう発注数より多く製造するため、余った商品は賞味期限には余裕があっても、出荷期間を過ぎれば廃棄していた。
「もったいない」の声を受け、川越工場は商品の提供先を検討。埼玉県少子政策課に相談し、関係する団体を通じて川越市内でフードパントリーを行う2団体を紹介された。
貴重な冷蔵食品 ひとり親家庭に好評
準備を整え、昨年9月下旬から提供を始めた。ヨーグルト類は冷蔵商品のため、温度計と一緒に専用の冷蔵ボックスに入れて月に2回、団体側に工場まで取りに来てもらう。商品を受け取る「ひだまりパントリー」代表の上蓑(うわみの)礼子さん(64)は「冷蔵品は繊細な温度管理が必要で、提供商品としては珍しい。利用者に喜ばれています」と話す。
ひだまりパントリーは、児童扶養手当を受給する約40のひとり親家庭を支援している。野菜や米などに比べてヨーグルト類は買い物の優先度が低く、利用者には「子どもの便秘が治った」「こんなにおいしいヨーグルトは初めて」と喜ばれているという。上蓑さんは「地域の企業の協力なしに、食料を配れない。ありがたい」と支援の輪の広まりを歓迎する。
篠崎運輸「買い取って破棄」から転換
主に食料品を取り扱う篠崎運輸(さいたま市大宮区)も、食品ロスに悩んできた。飲料や調味料、小麦粉、カップ麺など食料品のパレットを倉庫から輸送車に移す際、ぶつけたり、落としてしまったりすることがある。中身に問題は無くても外装に傷が付くと店頭では販売できず、自社で買い取って廃棄してきた。
篠崎運輸は破損品を出さないよう企業努力を重ねる一方、昨年から食品ロスの対応を模索。取引先を通じて埼玉県から提供先を紹介され、今年1月からさいたま市内のフードパントリーに提供している。
篠崎運輸で統括所長を務める森谷渉さん(46)は「どれだけ気を付けても破損品は出てしまう。捨てていた物が人の役に立つ。ほんの少しのことで状況を変えられるのだと知った」と話した。
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