演劇を療育に生かす放課後等デイサービス、つくば市に5月オープン 「演じることはコミュニケーション」

青木孝行 (2023年4月6日付 東京新聞朝刊)

設楽さんが運営する演劇教室の様子=昨年10月、土浦市で(設楽馴さん提供)

 発達障害の子どもの成長支援に演劇を活用する茨城県内初の児童発達支援・放課後等デイサービス「ぱぐ」が5月、つくば市大角豆(ささぎ)にオープンする。演劇の「言う」「聞く」「覚える」「伝える」などの要素を、コミュニケーションのトレーニングに取り入れる。運営する合同会社「Project LIFE(プロジェクト ライフ)」(阿見町)の設楽馴(したらじゅん)代表(35)は「10年間の役者経験を生かしたい」と準備にいそしむ。

演劇教室を運営する設楽馴さん

 設楽さんはかすみがうら市出身。小学生の頃からゴスペルやアカペラを習い、高校時代にはロックバンドで活動した。その後、シンガー・ソングライターを経て演劇の道に。土浦市の「劇団創造市場」の団員となり、「演じることはコミュニケーションだと思うようになった」。東京都内の小劇団で主人公役を勝ち取ったこともある。

子どもを抱き締めた両腕を交差させ、体を優しくたたく「バタフライハグ」のしぐさをする設楽馴さん=つくば市で

 2019年、合同会社と同名の劇団を設立。土浦市内で週1回の演劇教室を運営し、子どもと保護者らの指導に当たっている。

「呼吸法や表現方法が役立つ」

 ところが、翌年に始まったコロナ禍で生活が一変。仕事がない時期が続いたが、ようやく放課後等デイサービスに働き口が見つかり、これが転機となった。

 発達障害の子どもの療育に「役者として培った呼吸法やストレッチ、歩き方、人と人との距離の取り方、表現方法が役立つ」と手応えを感じたという。自身も幼い家族を失ったつらい経験があり、「生きていくためにはコミュニケーションが欠かせない。役者経験を子どもたちのために生かしたい」と一念発起。自らデイサービスを立ち上げるという大きな決断した。

対象はゼロ歳児から高校生まで

 資金は、個人事業主として携帯電話販売で稼いだ自己資金と融資で賄った。演劇を生かした療育のノウハウを深めるため、日本演劇教育連盟(東京都豊島区)の会員にもなった。

 デイサービスの職員には、前の職場の児童発達管理責任者や児童支援員、保育士らを招いた。劇団の仲間たちも開設に向けた準備を手伝ってくれている。施設名は犬種のパグから取った。「子どもにぴったりでしょ」と笑顔を見せる。

 5月10日にオープン予定。定員10人で、ゼロ歳児から高校3年生までを預かる。利用料金は世帯収入によって異なる。施設についての問い合わせは「ぱぐ」=電話029(844)9626=へ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年4月6日