角野栄子さんが今の子どもたちに感じる不安「右にならえのように同じ言葉で…」
長壁綾子 (2023年10月20日付 東京新聞朝刊)
「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)が11月3日に開館します。オープンを前に、館長の児童文学作家・角野栄子さん(88)に合同取材で話を聞きました。文学館のことから、3歳から23歳まで暮らした東京都江戸川区での思い出や戦争体験まで、多岐にわたる話の中で印象的だったのは「自分の言葉を持ってほしい」というメッセージです。
「自分の言葉」を持つためには?
小学校の教科書に作品が載っている角野さんの元には、児童からたくさんの手紙が届きます。先生が用意した3行ほどの用紙に、右にならえのように同じ言葉で書かれた手紙を読むと、角野さんは日本の子どもたちの将来が心配になってしまうそうです。「きれいに書くことだけが大事なんじゃない。教育の中で子どもたちを型にはめず、自由な心を育ててほしい」と訴えます。
小学1年生の時に戦争が始まり、大人たちがずるずると戦争へと向かっていってしまった姿を目にしたと振り返り、「一人一人が自分の言葉で自分の命を考えてほしい」と語りました。
では、「自分の言葉」はどうやって身につければいいのでしょうか? 角野さんは、「自由に本を読んでほしい」と一つの答えを提示します。「本を読むことで想像力が生まれ、自分の中に言葉が入ってくる。それを積み重ねて自分だけの辞書を作ってほしいの。『あなたはどう思う?』という問いに答える時に、その辞書がきっと大きな力になる」
蔵書1万冊が並び、角野さんの世界観があふれる文学館。ここで子どもたちがたくさんの本と出合い、自分の言葉を蓄積していくことを角野さんは心から楽しみにしています。
魔法の文学館
入館は原則として公式サイトでの事前予約制。開館時間は9時半~17時半(最終入館は16時半)。火曜日と年末年始は休館。料金は一般(15歳以上)700円など。問い合わせは=電話03(6661)3911。
角野栄子(かどの・えいこ)
1935年生まれ、東京都出身。代表作は「魔女の宅急便」など。2018年児童文学の「小さなノーベル賞」と言われる国際アンデルセン賞を受賞。