戦争と平和を伝える新たな絵本 夏に子どもと読みたい、おすすめの8冊

長壁綾子
子育て世代がつながる
 2020年8月15日は75回目の終戦の日。戦争と平和について考える絵本には、長く読み継がれている作品も多いですが、最近も毎年のように新しい絵本が登場しています。子どもの本専門店「クレヨンハウス」(東京都港区)の売り場スタッフに、近年出版されたおすすめの絵本を教えてもらいました。この夏、親子で手に取ってみませんか。
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子どもの本専門店「クレヨンハウス」に設けられた戦争と平和に関する絵本コーナー=東京都港区で

戦争を「伝え聞いた世代」が生み出す作品

 クレヨンハウスは毎年夏になると、入り口の一角に戦争や平和をテーマにした絵本コーナーを大々的に展開している。『かわいそうなぞう』(金の星社、1970年)、『ちいちゃんのかげおくり』(あかね書房、1982年)などロングセラーが定番として置かれる一方、『へいわとせんそう』(ブロンズ新社、2019年)、『へいわってどんなこと?』(童心社、2011年)など新しい作品もたくさん並んでいる。

 子どもの本売り場スタッフの馬場里菜さん(33)は、「昔から読まれている戦争の絵本は、戦争の悲惨さが主観的に描かれています」と話す。著者自身が戦争を体験しているので、自分の目で見たり、体験したりしたことを基に「戦争の記録」を伝える作品が多い。

 だが、終戦から75年。戦争体験者は高齢になり、戦争を知らない世代が大多数になっている。絵本の世界でも、戦争を伝え聞いた新しい世代が戦争を取り上げるようになってきているという。

向田邦子さん作品を基に『字のないはがき』

 2019年に出版された『字のないはがき』(小学館)はその一つ。作家の故・向田邦子さんの『眠る盃』に収録されている名作『字のない葉書』を下敷きにした作品で、実際に向田さんの家族が体験した戦争の話について、ともに直木賞作家の角田光代さんが文章、西加奈子さんが挿絵を担当した。

原爆で「消えた家族」を伝える写真絵本も

 「今ある暮らしの地続きに戦争がある、ということを物語る作品も最近では多く出てきています」と馬場さん。写真絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』(ポプラ社、2019年)に登場するのは、広島の町で暮らしていたごく普通の家族。だが、この一家は1945年8月6日に投下された1発の原子爆弾によって「全滅した」。原爆投下後の悲惨な写真は載っていないのに、笑顔あふれる一家の日常が一瞬でなくなってしまった、という出来事が重く突き刺さる作品だ。

子どもたちに手渡すとき気を付けたいこと

 新旧の戦争絵本を子どもたちに手渡すときに、どんなところに気を付けるといいのか。馬場さんは、「読まれ続けてきた戦争の絵本には、子どもにとっては恐ろしい描写もあり、トラウマになってしまうようなものもある。だが、これらが絶版になってしまうと、戦争の実態を子どもたちに伝えるすべがなくなってしまう」と意義を指摘。「一方、最近の絵本は戦争の残酷さを直接描くことはせずに、戦争があったという事実について、読者に考えさせるような作品が多い。両方をバランスよく読んでいってほしい」と話す。

戦争や平和をテーマにしたおすすめの絵本と児童書(クレヨンハウス選)

 2010年以降に出版された戦争や平和をテーマにした絵本や児童書の中から、おすすめの作品を馬場さんに教えてもらいました。

絵本

・『さがしています』(童心社、2012年)作・アーサー・ビナード 写真・岡倉禎志
 →広島平和記念資料館に置いてある被爆した物から想像してみる。物が語り部になっている写真絵本。

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*表紙写真:「鍵束」寄贈者・中村明夫/見開き写真:「時計」寄贈者・濵井徳三/「軍手」寄贈者・浅野純以(いずれも広島平和記念資料館所蔵)

 

『ヒロシマ 消えたかぞく』(ポプラ社、2019年)著・指田和 写真・鈴木六郎
 →普通に暮らしていた人たちがどういう思いで8月6日を迎えたのか。大人も子どもも考えさせられる絵本。

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・『字のないはがき』(小学館、2019年)原作・向田邦子 文・角田光代 絵・西加奈子
 →平和な家族が戦争でバラバラになる。まだ、字が書けない幼い妹が疎開先から元気だったら○を書き、はがきを送ってくるのだが、その○がだんだんと小さくなっていき・・・。

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・『へいわってすてきだね』(ブロンズ新社、2014年)詩・安里有生 画・長谷川義史
 →沖縄に住んでいる小学生が書いた詩が絵本になったもの。子どもならではのみずみずしい感覚で、日常の中にある平和について描かれている。

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・『プーさんとであった日』(評論社、2016年)文・リンジー・マティック 絵・ソフィー・ブラッコール 訳・山口文生
 →クマのプーさんの基になった物語。獣医師が、戦地に向かう途中に出会った子グマ、ウィニー。ウィニーは軍隊のマスコットになる。戦争の悲劇や兵士たちとの交流が描かれている。

・『ベイビーレボリューション』(クレヨンハウス、2019年)文・浅井健一 絵・奈良美智
 →浅井健一さんの「Baby Revolution」の歌詞と、奈良美智さんの既存の作品や書き下ろしのイラストを構成した絵本。赤ちゃんたちが戦場へ向かう話。赤ちゃんのことを考えたら、戦争なんてばかばかしいよねと高らかに歌い上げる。

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児童書

・『トンネルの森 1945』(KADOKAWA、2015年)著・角野栄子
 →著者が、子どもの頃の戦争体験を脚色。子どもの目線から見た、子どもの知っている戦争。

・『ワタシゴト 14歳のひろしま』(汐文社、2020年)著・中澤晶子 絵・ささめやゆき
 →修学旅行で広島平和記念資料館を訪れた5人。資料館にあるものから、悩みを抱えている子どもたちが感じとるものとは。

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