#絵本が君の背中を押す 学校再開でも「行きたくない」子どもたちへ、佐賀の書店員から広がる輪

 新型コロナウイルスの感染拡大による長期休校の後、「学校に行きたくない」と感じている子どもたちを勇気づけようと、一人の書店員がTwitterではじめたハッシュタグ「#絵本が君の背中を押す」が広がりをみせています。趣旨に賛同した多くの書店員や出版社の広報担当者、図書館司書など、絵本と関わる人たちが「元気が出る1冊」を選び、コメントを添えて発信していて、交流の輪が広がっています。

きっかけは幼稚園児の親からの相談

 「#絵本が君の背中を押す」を始めたのは、明林堂書店南佐賀店(佐賀市)の書店員・本間悠さん(41)。自身のTwitterのアカウントで6月24日に、学校や幼稚園に行きたくない、と感じている子どもたちに向けて、オススメの絵本をハッシュタグを付けて、紹介することを呼びかけました。

 企画したきっかけは、書店を訪れたお客さんから「子どもが幼稚園に行きたがらず、友だちがなかなかできない。そんな時に読んであげられる絵本はあるだろうか」と相談されたことでした。

一歩踏み出すきっかけになる言葉を

 例年、ゴールデンウイークや夏休みなどの長期休暇後に、「学校に行きたくない」と悩む子どもたちは少なくありません。「新型コロナの拡大で新学期のスタートが2カ月近く遅れ、長い間休まざるを得なかった子どもたちも今、同じような問題に直面しているのでは」と感じた本間さん。「同じような悩みを抱えている親子はたくさんいるのでは」と考え、Twitterでの呼びかけを決めました。すると、予想以上に多くの出版社や図書館司書、書店員などが「#絵本が君の背中を押す」のハッシュタグを付けて、発信してくれました。ハッシュタグを付けた投稿は絵本の紹介、感想など250件ほどに上っています。

 「#絵本が君の背中を押す」というハッシュタグを考えつくまでは、ずいぶんと悩んだそう。140字という短文で表現するTwitter。制限の中で、学校や幼稚園に行きたくない子どもたちが前向きな気持ちになり、不安をやわらげたり、一歩踏み出すきっかけになったりするような言葉はないだろうか。「学校へ行ったほうがいい、という言葉は押しつけになるし、マイナスな言葉も使いたくなかった」。考えた末に出てきたのが「背中を押す」という言葉でした。

 「そっと背中をさするような絵本や、明るく背中をポンッとたたくような絵本など、さまざまな立場の人たちが多様な絵本を紹介してくれている。私も知らなかった絵本を発見する機会にもなっています」

本だから、懐の深いおおらかな企画

 ハッシュタグを見た人が実際に絵本を購入してくれた、書店の中に特設コーナーを作った、という報告もありました。本間さんも自店でコーナーを作る予定だということです。

 本間さん自身も、3人の子どもたちがそれぞれに、「幼稚園へ行きたくない」「学校へ行きたくない」という時期を経験したことがあるといいます。自分の子育てを責めてしまい、悩んでしまうこともありました。「ハッシュタグを通じて、自分を責めないでと伝えたい。絵本が今悩んでいる子どもたちや親の力になってほしい」と願っています。

 企画に参加したブロンズ新社の佐古奈々花さん(29)は「動画やテレビではない、本ならではの距離感がいいなと思い、参加した。直截(ちょくせつ)的なメッセージを打ち出すのではなく、幅があり懐の深い、おおらかな企画。このハッシュタグの上に、たくさんの温かい絵本があるというのを知ることができるのもうれしい」と話しています。

📚 本間さんが選んだ「#絵本が君の背中を押す」5冊

『おともだちになってね』作・岡本一郎 絵・つちだよしはる(金の星社)

おともだちになってね

 お友だちを作るのって、難しいと思っている子は、クマのフーに勇気をもらおう。勇気を出して、ちょっと怖いつり橋を渡って、ケーキを届けるフーのひたむきな姿が可愛い。

『ふたりはともだち』作・アーノルド・ローベル 訳・三木卓(文化出版局)

 小学校の教科書にも掲載されているがまくんとかえるくんの物語。友だちって、たくさんいなくてもいいんだよ。

『ねえねえパンダちゃん』作・西村敏雄(ほるぷ出版)

 最初の「あそぼ」「いいよ」は大人でも難しい。もじもじ、恥ずかしがり屋のパンダちゃんのように勇気を出して、遊ぼうと声をかけてみると新しい世界が広がるかも。

『ころべばいいのに』作・ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

ころべばいいのに

 小学生以上の人におすすめ。みんなと仲良くなんてできない。誰かとうまくやっていけない自分にストレスを感じてしまいがちな子へ。

『チャーリー、こっちだよ』作・キャレン・レヴィス 絵・チャールズ・サントソ 訳・いわじょうよしひと(BL出版)

 集団の中で生きられない苦しさを抱えたヤギさんの心を解かしたのは、目が不自由なウマさん。友だちが心を豊かにしてくれる。

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  • 匿名 says:

    書店さんには、こういうところでパワーを発揮出来る人がたくさんいると思います。医療関係者然り、教育関係者然り、困難の多い現場での激務に対する処遇や風評被害や差別には、やっと理解者や救済者が現れていますが、本来は町の文化的発信地であり、子どもたちと大人の世界を結ぶ窓口であった書店さんが、次々と店を畳んでいます。そして、書店さんを含む出版業界は、他のどの業界に比べても、政治力が弱い。
    無くなったら困るという事に気がついていないので、あるいはそこに力を注いでも、得をしないので、救済しようと本気になる政治家はいません。
    この記事を読んで、あらためて書店さんの存在意義の大きさに気がつきました。
    特に、経営者というより、現場の書店員さんに頑張ってほしいです。エールを送ります❗️(出版社営業・池水秀徳・61歳)

      

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