ヨシタケシンスケさんの頭の中って!? 「くだらなさと大事さを行ったり来たり」 人気の絵本作家、意外にネガティブ思考

樋口薫 (2019年4月4日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる
 この人の頭の中はどうなっているんだろう-。いま子どもにも大人にも人気の絵本作家、ヨシタケシンスケさん(45)の作品を読むたび、関心を抱いてきた。新刊のイラストエッセー集『思わず考えちゃう』(新潮社)は、そんな読者の疑問に応える一冊。いつも手帳に描いているスケッチとその解説をまとめた本書からは、作家の卓抜な想像力とともに、意外ともいえる「ネガティブ思考」がのぞく。
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「読む年代で印象が変わり、一生楽しめるのが絵本の魅力」と語るヨシタケシンスケさん

「思わず考えちゃう」 気になったことを手帳にスケッチ

 テーブルに置かれたリンゴを見て「もしかしたらこれはリンゴじゃないかも」と空想を広げるデビュー作『りんごかもしれない』。服を脱ごうとして引っ掛かってしまった男の子が「ずっとこのままだったらどうしよう」と妄想する『もうぬげない』。よくある日常風景が、想像力によって愉快で壮大な物語に変わっていく点が、ヨシタケさんの絵本の魅力の一つ。

 作者自身も仕事や外出、育児の合間に「思わず考えちゃう」タイプだという。20年前から常に手帳を持ち歩き、気になったことや思いついたことをスケッチで残している。記録の対象は「描いておかないと忘れてしまうくらいどうでもいいこと」。描く理由は「自分を盛り上げるため」だ。

落ち込みやすい性格 想像力はもろ刃の剣

 「もともと落ち込みやすい性格なんです。想像力はもろ刃の剣というか、いろいろと心配し過ぎたり、悲しいニュースでつらい気持ちになったりする。そんな時に自分を励ますため、どうでもいいことをどうやれば面白がれるか、常日ごろから考えるようになった」。その作業の蓄積が、絵本の作風となって結実した。まさに本書は作家の「ネタ帳」である。

 収められているのは、例えばこんな一こま。「使った後のストローの紙袋が気になる」「母親に抱かれた子どもの靴が落ちた瞬間」「仕事で自分の短所をどう長所に変えるか」-。本当にどうでもいいようなことからまじめなことまで、ヨシタケさんは考え続ける。「くだらなさと大事さを行ったり来たりするこの感じが、まさに生活するということだと思う。その感じを今後も大事にしたいし、面白がっていきたい」

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ヨシタケさんが日常的に描いているスケッチを収録した『思わず考えちゃう』の一こま

売れっ子の今も「生きづらい少数派に向けて描いている」

 2013年、40歳と遅咲きのデビューだが、書店員が選ぶ「MOE絵本屋さん大賞」の5回の受賞や、世界最大の児童書見本市で発表される「ボローニャ・ラガッツィ賞」の特別賞受賞など、瞬く間に売れっ子になった。それでも「自分は少数派の読者に向けて描いている」と言い切る。

 「正論を言われると反抗したくなる、周りが熱くなると冷めてしまう、僕はそんな子どもだった。同じように肩身の狭い思い、生きづらい感じを抱えている人に面白がってほしい」

 とはいえ今回のようなエッセー執筆は初体験で、緊張もあるという。「読み返してみて、めんどくさいやつだなと自分でもイラッとしました。『分かる』と言ってもらえればうれしいが、『嫌い』と言われる覚悟もできています」。そう語った後、心配そうに付け加えた。「でも、せめて半々くらいだといいな…」

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