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読み聞かせで大切な「待ちよみ」とは 絵本講師が説く、親子のコミュニケーション

吉岡潤 (2019年8月19日付 東京新聞朝刊)
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約1500冊の絵本の囲まれて暮らす絵本講師の内田早苗さん=神奈川県平塚市の自宅で

 「絵本講師って、何をやるんですか」と、よく聞かれるという内田早苗さん(45)。「子育てをする中で、家庭で親が子どもに絵本を読むと、こんなにいいことがあると伝える仕事」。平塚市の自宅では、約1500冊の絵本に囲まれて暮らす。

補足や言い換えはしない 子どもの反応を待とう

 読み聞かせで提唱するのが「待ちよみ」。作品に描かれている以上の説明はしない。言葉が難しいと思っても言い換えない。普通に読む。そして、子どもがどこに注目するか、何を言い出すか、観察し、反応を待つ。「子育ては待つこと。待つことは楽しい。それを絵本は教えてくれる」

 雑誌で絵本講師という存在を知り、川崎市に住んでいた2010年4月から1年間、東京で開かれた養成講座で絵本の歴史や選び方などを学んだ。絵本は「親と子の共通言語」、読み聞かせは「親と子が一緒にいると実感できる行為」と理解した。「本を読むのは簡単でハードルが低い。誰にでも勧められるなと」

 ただ、実際に絵本講師を名乗ってみると、なかなか仕事の依頼は来なかった。平塚市に引っ越して1年が過ぎた12年春。息子の小学校入学に合わせて、自宅で「絵本を楽しむ会」を始めた。チラシを見て最初に来た一人が気に入ってくれて、口コミでたちまち参加者が増えた。書店にも売り込み、仕事は広がった。

思い出深い相談「野菜嫌いの子に役立つ本は?」 

 講演などで説くのは、絵本自体の価値ではない。子育ての道具、コミュニケーションツールとしての有効性だ。

 「読み方は何でもいい。家庭では抑揚や強弱をつけたり、登場人物を演じ分けたりするスキルは必要ない」。ストーリー次第で自然に感情が声にこもる。それを子どもは感じとる。「本の中の言葉は全て、子どもにとっては親の言葉ですから」

 思い出深いエピソードがある。イベントで2歳の男の子を連れた女性に「野菜を食べないので食べさせたい。役に立つ本はないか」と相談された。「子どもが嫌いな野菜の本なんて薦めたくない」と思った。聞けば「ご飯しか食べない」というので、「おにぎり」をおいしそうに描いた作品を買うように提案した。

 少し日がたって、女性からメールが届いた。「あれから毎日、おにぎりの本を読んでいます。子どもがせがむからです。この子が望んでいることをやってあげているという実感を初めて持てました」と記されていた。わが意を得たり。「絵本は気持ちがいいものなんです」 

絵本講師とは

 NPO法人「絵本で子育てセンター」(兵庫県芦屋市)が2004年に養成講座を始めた。絵本と子育てに関する知識を深め、絵本講座を開いたり、講演したりするための実践的な方法を教える。18年度までに約1700人が受講。現在は毎年、大阪と東京で開催している。内田さんの問い合わせ先は、本人のサイト「待ちよみ絵本講師内田早苗・きいろいおうち」から。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年8月19日