昆虫食にハマった次男 心配だけどうらやましい〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉

(2024年9月4日付 東京新聞朝刊)

 

 全てのはじまりは、次男が小学1年生だった5年前。旅行で行ったタイの屋台で、虫の揚げ物を食べた。それから次男は、バッタ、セミ、アリ、ザリガニ、ハチ、クモ、クワガタ、カメムシなど、手当たり次第に食べだして「アブラゼミは、羽を動かす筋肉のところがうまい」「アシナガバチは、幼虫も成虫もうまい」なんて言っている。

 将来は、アラスカ辺りで狩猟生活をする計画。そっち関係の本を読んでは「ジャコウウシは、臭(くさ)いけど、うまいらしい」「アナウサギは、本気で逃げる時、二足歩行なんだって」と、そんな事ばかり言う次男を、少し心配ながら、うらやましくも思っている。

 

 それが先日、生ごみを入れるコンポストにうじゃうじゃいる、ウジ虫を食べると言いだした。書いてるだけで、背筋がゾクッとする。「このウジ虫、本当は『アメリカミズアブ』っていうの。これでもし、おいしかったら、ごみから食料が取れるんだよ。すごくない?」と目を輝かせた。

 思いたったら実行の次男は、早速、捕ってきたウジ虫を油で揚げ、塩をかけ、恐る恐る口に入れた。「揚げすぎたか。中がスカスカで味がしない」と、次はゆでた。「おいしくないわけじゃないけど…きもちわるい」と、おなかの不調を訴えて以来、ウジ虫は食べていない。

 今度の誕生日プレゼントに「コオロギを買って」と、次男。養殖して食べるらしい。「パパは、脂が乗ってるのか、ヘルシーなコオロギ、どっちがいい?」と聞かれる。正直どちらも食べたくはないが、「脂の乗ってる方」と答えると、「やっぱり、フタホシコオロギだよね」と、次男は、うれしそうに言った。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。14歳、11歳、7歳、3歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。