〈清水健さんの子育て日記〉1・亡き妻へ…見ててよね

(2018年3月30日付 東京新聞朝刊)

奈緒(左)は立つことさえ厳しかったが外出許可を得てのお宮参り

 写真の中のママ。当時3カ月の息子を抱っこする満面の笑みの妻・奈緒は、2015年、29歳の時、乳がんで僕たちの横からいなくなってしまいました。 

 子育て大変ですよね?と聞かれたら、「はい、大変です!」と答えます。笑顔で。

どんな笑顔でも

 息子は今、3歳6カ月。まあ、立派な反抗期(笑)。家を出る時に「大丈夫?」、何度も確認するけど「出ないから」と言い張る息子。案の定、外で「パパ、トイレ」。

 「これは何?」の質問はエンドレス。写真を撮る時「はい、かわいい顔!」って言ったら、わざと後ろ向き。公園ではパパが負け続ける鬼ごっこ。でも、ふとした瞬間にソッと手をつないでくる、その小さい手が温かくて…。

 食べることすら忘れ、涙さえ出ない時期もあったけど、今はご飯を残すと、隣で息子が「パパ、残してるよ」って言うんです。息子が大きな支えになってくれ、頑張ってくれる。だからママのように笑わないと、やっぱり元気でいなくちゃいけないですよね。でも無理する必要はなくて、泣いている笑顔や、悔しい笑顔、どんな笑顔でもいいのかなって、最近、思います。

「今」できること

 思い出すのもしんどかったけど、妻の笑顔の意味が知りたくて書きながら必死に向き合った『112日間のママ』(小学館)。出版をきっかけにした講演会は200回近く。感じた思いを『笑顔のママと僕と息子の973日間』(同)に記し、今回も紙面でお目にかかることになりました。

 講演後、「実は僕の妻も今、病で…」「俺もシングルファーザーで…。やっと娘が高校生になった」と、僕の前で泣き崩れる方がいます。グッと我慢していらしたんだと思います。皆さまと一緒に考えていきたい。「今」できること、「大切な人」のために。

 疲れていたり、親の都合で叱ったりすることもいっぱい。「ごめん、パパ、機嫌が悪かったよな…」、息子の寝顔を見て反省の日々。さあ、4月から幼稚園。息子が泣くのか、パパが泣くのか。見ててよね。 (元アナウンサー)

〈次回はこちら〉2・幼稚園 息子と泣いて笑って

清水健(しみず・けん)

1976年、堺市生まれ。2001年、読売テレビ入社。2013年5月に結婚し、2014年に長男誕生。約4カ月後に妻を亡くす。2017年1月に退社、現在は主に講演活動を中心に活躍。 著書に「112日間のママ」(小学館)、「笑顔のママと僕と息子の973日間」(同)がある。

コメント

  • まだ亡くしたなら、良い方とは言い難いですが、私はシングルマザーです。上の娘が生後6ヶ月、下の子が妊娠が分かった頃に別居しました。元旦那も義母も2人目はいらないと。じゃあ何故妊娠するような事をしたのか…
     
  • 私も夫をガンで亡くしました。あれから10年8ヶ月。年長さんだった娘は4月から高校2年生になります。 『ずっと傍で見守っていてくれるはず』そう信じて娘を育ててきました。でも、もっと一緒に泣いたり笑った