「どうしたらよいのか、不安でこわい」文章にならないメッセージが届いて〈清水健さんの子育て日記〉66
相談してもわかってもらえない…
いつも通りに息子と一緒に家を出て、肌寒く感じた朝に「今年もあと少しやな」とひとりつぶやくと、「そうやな」と気のない返事が返ってきた。「今日の休み時間はどうしようかな!」「楽しいと休み時間が短く感じるんだよね!」。先月、10歳になった息子から「今日」を楽しむことを教えられる一日のはじまり。「勉強している時は長いんだけどね」と付け足す息子に思わず笑ってしまった。
文章にならない言葉がつづられたメッセージが届く。「どうしたらよいのか、不安でこわい」。奥さまが亡くなられてまだ1カ月もたたない男性からのメッセージ。僕に話して何かが解決するわけではないことは十分に理解されていると思う。主宰するシングルファーザーのオンラインサロンのメンバーも「僕は妻が亡くなる3週間前に、清水さんに同じようなメッセージを送ったと思います」。
今だから思うこと、言えることがある。「誰かに相談しましたか?」とみんなで話す中で、「相談なんてできないです。きっと、この悲しみはわかってもらえない」。そうじゃないのかもしれないけれど、そう思ってしまう。
「このようなメッセージが届いたらどうアドバイスしますか?」「僕たちが何を思おうと、どう悲しもうと、目の前には守らなくてはいけない子どもたちがいる」「子どもたちをどうしますか?ということだと思います。僕たちは生きていかなくちゃいけない」。冷たいように思うかもしれないが、経験してしまったからこその説得力がある。
「誰に相談するのか? 自分たちは特別ではない。でも、誰に相談しても、生活全てを面倒みてくれるわけではない。相談しても仕方がないですよね」。寂しい言葉に感じるけれども、これも現実なんだと思う。
一番影響を受けるのは子どもたち
大分県で「はなちゃんのみそ汁」の著者、安武信吾さんとシングルファーザー対談をした。娘さんがもうすぐ大学を卒業する。
誰かに頼らざるを得ない状況なのに意地を張ったり、強がったりして自分を追い込む。本当は誰かに頼りたいのに。その時は気付かなかったなと振り返る。でも、そんな父親をみて、一番に影響を受けるのは子どもたちなんですよね、と。
まだまだ「これから」のシングルファーザー人生。そんな僕にいつも冗談ぽく「覚悟するんだよ」と話してくれるのは、安武さんの優しさなんだと思う。
悲しみを抱えたままでも、今を幸せに生きることはできる。そう思えてきたような、もう少しのような。意地を張るけど、本当は寂しがり屋。そんな自分を認めてあげられる生き方をしたいなと思う。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。