「言い返したら首を絞められた」 虐待疑惑の児童養護施設 元入所男性が証言
岡本太、石原真樹 (2019年5月24日付 東京新聞朝刊)
東京都中野区の児童養護施設「愛児の家」で虐待があったとして東京弁護士会(東弁)が是正を勧告した問題で、6年前まで施設にいた男性(20)が本紙の取材に応じ、「(男性職員に)腕で首を絞め付けられ、のしかかられた」と証言した。男性は東弁の調査にも同じ話をしたといい、東弁が身体的虐待と判断した勧告内容の一つと一致する。
「職員が突然キレた感じ。マジか、と思った」
男性職員から暴力を受けたのは中学3年のころ、施設内の自分の部屋だったという。職員とソファに並んで座っていた時に「何かがみがみ言われて、言い返したらいきなり首を絞められた」と振り返る。
「腕を首の辺りに回され、そのまま倒れるようにソファに押しつけ、体重をかけられた。突然キレた感じ。マジか、と思った」と話す。部屋にはほかに誰もいなかったという。
男性は親から身体的虐待を受け、12歳で施設に入所。中学3年の夏休みまで施設にいた。入所直後は職員との関係は悪くなかったという。だが、中学1年の後半ごろから反抗するようになり、職員らと衝突することが増えたと話す。
「頭ごなしに否定。気を許せる人はいなかった」
虐待する親に反抗しなかった分、「反動が来ちゃったのかも」と言い、「施設でのストレスもあったと思う」と振り返る。「話をちゃんと聞いてくれる人がいなかった。言い合いになっても複数の職員に囲まれ、袋だたきのような感じ。頭ごなしに否定される。気を許せる人はいなかった」
都は2013年に虐待通告を受け、施設内で子どもへの聞き取り調査を実施。男性も話を聞かれたが、「被害について具体的に聞かれず、ほとんど話さなかったと思う」と言う。14年の2度目の調査では話を聞かれなかった。
東弁は都の1度目の調査について、施設内で聞き取りを行うなど子どもが安心して真実を語れる環境ではないとして「著しく不適切」と指摘。調査手法の改善を勧告した。施設側は東弁の事実認定を「事実ではない」と否定し、都も虐待はなかったとしている。