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児童虐待防止、英国の20年に学ぼう 小さな声届ける制度を IPA元日本支部代表・奥田陸子さん提言

(2019年5月5日付 東京新聞朝刊)
 子どもが声や意見を出せるよう支援する「アドボカシー」と呼ばれるしくみが注目されている。「擁護」「支持」などを意味する言葉で、英国などで導入されている。子どもの声に向き合わず痛ましい結果になった児童虐待事件が相次いだことから、必要だと認識が広まった。どんなしくみなのか、「子どもの遊ぶ権利のための国際協会」(IPA)日本支部の元代表、奥田陸子さん(85)=名古屋市=に聞いた。

子どもの意見表明について語る奥田陸子さん

ロンドンの女児虐待死きっかけ 子どもの声を聴くことに本腰

 昨年3月に東京都目黒区で5歳女児、今年1月には千葉県野田市で小学4年女児が虐待で亡くなった。2人ともSOSを出していたことが分かり、十分に受け止めなかった児童相談所や教育現場へ非難が集まった。

 「実は英国も約20年前、似た状況にあったんです」と奥田さんは話す。

 2001年、ロンドンの親戚に引き取られた8歳女児が虐待死。医師やソーシャルワーカー、行政の福祉担当者らがかかわっていたのに、被害者である女児の話を聴いていなかった。前年には英西部ウェールズで児童養護施設内での虐待について報告書が公表されており「弱い立場の子どもの声を聴くことに本腰を入れることになった」。

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第三者が子の側に立ち、意見を伝える「アドボカシー」導入

 導入された一つが、アドボカシー。養護下にある子どもなどへのアドボカシーを、自治体に義務付けた。

 アドボカシーは、子どもの側に立ち、気持ちや意見を行政の担当者や施設職員らに伝えられるように支援すること。それを実施する人が「アドボケイト」で、行政から委託された民間団体に所属する第三者の立場で、子どもが考えをまとめる手伝いをしたり、話せる場をつくったり、付き添って力づけたりする。

 「子どもが話せない場合は子どもの承諾の上、代弁しますが、その際、自分の考えは交えません」

 例えば、自宅へ帰ると虐待される危険が高くても、子どもが「帰りたい」と希望すれば、行政などにそのまま伝える。その意見を踏まえ、ソーシャルワーカーや行政などは判断する。希望通りの結果にならないこともあるが、子どもの意見が真剣に検討されることが重要なのだという。

日本でも検討中だが「聴く側の意識が変わらなければ不十分」

 日本でも関心は高まり、今国会での成立が見込まれる児童福祉法改正案には、施行後2年をめどに子どもの意見表明を支援するしくみを検討することが明記された。ただ、奥田さんは「アドボケイトの配置だけでは不十分」。聴く側の意識が変わらなければ、子どもの声はやはり軽視されてしまう。

 英国では、国に子どもの権利に関して最高の権限を持つ「子どもコミッショナー(長官)」という役職をつくった。「子どもオンブズマンのように独立した立場で、福祉や教育、司法、移民対策など子どもにかかわるあらゆる分野について、権利が守られているか徹底的に調査し、政策提言できる強い権限を持ちます」

 さらに、自治体に対し、子ども施策には子どもの声を反映させることを義務付け、反映の度合いで補助金を増減させるしくみもある。「国が、子どもの意見を聴く強い姿勢を示した上での、アドボカシーです」

 日本は国連から、子どもの権利を包括的に定めた法律や子どもが苦情を言える機関をつくるよう勧告されている。奥田さんは「意見表明の支援が必要なのは虐待に遭った子どもだけではありません。見えない困難を見つけるためにも、すべての子どもから意見を聴く体制を、国も地方もつくるべきです」と話している。

奥田陸子(おくだ・りくこ)

 1934年東京生まれ。名古屋市で双子の子育てをしながら子ども文庫、冒険遊び場づくりなど地域の子育て活動に専念。IPA日本支部代表を務めていた2000年、子どもの社会参加や意見表明などの理論と方法を示したロジャー・ハート著「子どもの参画」を翻訳し出版。編著に「ヒア・バイ・ライト(子どもの意見を聴く)の理念と手法」(09年)。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年5月5日