新しい子ども食堂を立ち上げよう 川口市の講座が集大成 斬新なアイデア続々

大西隆 (2019年6月27日付 東京新聞朝刊)
 若者向けの「子ども食堂学生ボランティアスタートアップ講座」の第3部として、埼玉県内に新しい子ども食堂を実際に立ち上げるプロジェクトが動きだした。年内いっぱいを掛けてのチャレンジ。川口市幸栄公民館(同市幸町3)で23日に開講し、集まった大学生や高校生らの受講生約15人が、斬新なアイデアを出し合った。

理想の子ども食堂像について話し合う参加者=川口市で

「『親になるってどういうこと?』を考える子ども食堂」 

 東洋大ライフデザイン学部助教の関屋光泰(みつひろ)さん(45)と、川口こども食堂代表の佐藤匡史(まさし)さん(46)が企画して、5月に始めた連続講座の最終ステージ。関屋さんの講義や佐藤さんら運営の子ども食堂の見学を通して培った知見を生かす、いわば大舞台となる。

 第3部の初日となったこの日は、4つのグループに分かれ、実現を目指したい子ども食堂のコンセプトを議論。ユニークなアイデアが相次いで出された。

 例えば「『親になるってどういうこと?』を考える子ども食堂」。

 学童保育事業に携わった経験があるという東京都内の会社員和田世新生(よしゆき)さん(28)は「核家族化が進み、地域のつながりが薄れ、若者が親になるとはどういうことかを知る機会が少ないと思うから」と提案した理由を説明。「子育てがどれだけ大変かというイメージを持てないまま親になった末に、子どもを虐待してしまうのではないか」と語る。

「不登校でも外国籍でも、誰でもふらっと…自由な場」

 さらには、例えば「誰でもFlat(フラット)来られるみんなの居場所」。

 年代の違いや、不登校や外国籍だったり、障害があったりといった境遇を問わず、誰でもふらっと訪ねてくることができる自由な場というコンセプトだ。

 「不登校は異常で改善すべきだという考え方は、不登校の子にとってプレッシャーになる」と指摘したのは、小学生時代に不登校になり、フリースクールに通ったと打ち明けた大学1年生(19)。「居場所では、大人が(自分の考え方から)ああすべきだ、こうすべきだと指導しすぎないことが重要だと思う」と話した。

アニマルセラピーなど異色の構想も 具体化へ第一歩

 保護猫や保護犬を使ったアニマルセラピー機能を持たせた「悩みを語れる子ども食堂」、多様な成功体験を味わえる「味の素(もと)のような居場所づくり」という異色の構想も紹介された。

 それぞれのコンセプトを念頭に、場所の確保や資金調達といった実現に欠かせない要件を整理し、おおよその工程もチェックした。

 関屋さんは「悩み」「親になるってどういうこと」「誰でも」「成功体験」のキーワードを結び、「1個のプランが見えてきたのでは」と講評。具体化へ向けて一歩を踏み出した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年6月27日