「明るさは武装」 重い障害を持つ娘との日々、親の葛藤を本に

(2016年5月18日付 東京新聞朝刊)

福満美穂子さん(右)と華子さん。「本を通じて娘との日常を知ってほしい」と美穂子さん

 東京都中野区の福満(ふくみつ)美穂子さん(44)が、脳性まひで寝たきりの長女華子(かこ)さん(12)との日常を一冊の本にまとめた。医療の進歩や支援態勢の広がりで、地域で暮らす重い障害の子が増える中、「医療ケアを受けながら生きる子の存在を知ってほしい」との思いを込めた。

『重症児ガール ピョンちゃん』

 本は「重症児ガール ママとピョンちゃんのきのうきょうあした」(ぶどう社)。「ピョンちゃん」とは華子さん。常に行動を共にしているので、アニメ「ど根性ガエル」で主人公のシャツにいるカエルのピョン吉にちなんだ呼び名だ。

 「いつも不安でいっぱいだった」という誕生後から、障害を受け入れ始めたころのこと、親子の日常、華子さんが好きなアイドルグループ「嵐」のコンサートへ出かけるまでになった話などをつづった。

重い障害のある娘との日々をつづった本。イラストも福満さんが描いた

泣けば自分が壊れてしまう、という不安

 華子さんは、生後すぐに発症した低酸素性虚血性脳症の影響で、寝たきりで重度の知的障害がある。難治性のてんかんも発症。胃ろうなどの手術を受け、一日4回の栄養剤などの注入と投薬などが必要だ。夜間も発作が起き、福満さんは睡眠も十分に取れない。

 本には親の気持ちの葛藤を率直に吐露した。

 「障害のある子のお母さんは明るい人が多い」と言われることを、「明るさは育児の困難さの裏返しで、武装」とする。泣くという無防備な精神状態になったら自分が壊れてしまうのではないかとの「無防備になれない不安感」が明るく振る舞わせるのだという。

どうして私が・・・の思いは一生消えない

 日本てんかん協会都支部の機関紙に2007~14年に連載した文章に加筆した。昨秋の完成後、華子さんは気管切開の手術を受け、夜間は人工呼吸器を付けるように。福満さんは離婚し、母子2人の生活をヘルパーや訪問看護師ら10人以上に支えられて送る。

 「どうして私が障害のある子の親に…という思いは一生消えない」と福満さん。それでも「娘がにこっと笑う瞬間や、周りの人がかわいがってくれることがうれしい。人生は何が起こるか分からないけど、その中で生きていくしかない。娘のことを知ってもらい、将来もこの地域で暮らし続けることが理想」と語る。

 1620円(税込み)。日本てんかん協会都支部=電03(6914)0152=や、版元のぶどう社のサイトでも購入できる。

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 福満さんが理事を務める、重い障害のある子と家族のための支援事業を行うNPO法人「なかのドリーム」のサイトはこちら