離婚後の「共同親権」3カ月遅れでパブコメ実施へ 法制審の試案に自民党が介入、賛否双方の識者が問題視「越権だ」「民主的とは言えない」

(2022年11月17日付 東京新聞朝刊)
 離婚後も父母がともに子の親権を持つ「共同親権」を巡り、導入への意見を国民から募るパブリックコメントが当初の予定より約3カ月遅れて実施されることになった。法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、パブコメにかける中間試案を8月にまとめたが、共同親権を際立たせるよう求める自民党の推進派の反発で延期していた。最終的に試案の内容は変わり、法制審の関係者や識者は「独立した議論をすべき審議会への介入だ」と経緯を問題視する。

自民が反発…法務省が配慮して延期

 「私たちの意向が反映された。これならパブコメをしてもいい」。自民党議員の一人は、法制審部会が新たにまとめた中間試案の修正案を評価した。

 法務省が8月、自民党法務部会に内々に示した当初案は、法制審の中に共同親権への賛否両論があることを踏まえ、大きく分けて現行の単独親権のみを維持する案と、単独親権を残して共同親権を導入する案を併記していた。

 この案に、共同親権の導入を目指す一部議員が「党の議論が反映されていない」と反発。法制審部会で了承されるはずだったが、法務省は自民に配慮してパブコメの延期を決めた。

新たに盛り込まれた「個別に判断」

 法制審は、法相が任命した学識経験者で構成され、諮問されたテーマを調査・研究する機関。パブコメなどを活用し、法案作成の準備をする。議論の内容は部会を含め議事録で公開されるため、透明性が保たれ、試案を取りまとめる際に政党の事前了承は必要ない。

 だが、法務省は今月15日の修正案取りまとめを前にした10日、内容を自民党法務部会で説明し、了承を得た。宮崎政久法務部会長は「本来は党の了解は不要だが、自民が原因で延期となっていた経緯を踏まえた」と異例の対応であることを認める。

 修正案には当初案に加え、共同親権か単独親権のどちらを選ぶかを個別に判断するという選択的な考え方が新たに盛り込まれた。問題は、最後に内容が変わったことの正当性だ。

 共同親権の導入を巡る法制審部会の議論は1年半に及んだ。携わってきた関係者は、修正案を見て「なぜこの内容に」と驚いたという。選択的な考え方は、当初案の注釈に記載されていただけで、正式な案として検討された記憶はない。法務省は否定するが「自民党に忖度(そんたく)したのではないか」と疑念を抱く。

密室の議論が影響したとすれば…

 養育法制に詳しい長谷川京子弁護士は「議員が法案の前段階のパブコメに口を出すのは越権だ」と批判。選択的な案に関し「一見穏当だが、問題のある親が、共同親権を離婚や養育費の支払いに応じることの条件にする可能性もある」と指摘する。

 共同親権を支持する立命館大の二宮周平名誉教授(家族法)は、選択的な案は前進だと受け止めつつ「発言が公開されない(自民党の)密室の議論がパブコメ前に影響したとすれば、民主的な手続きとは言えない」と語る。

 子と疎遠になっている別居親らが導入を求めている共同親権。ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待が原因で離婚した人たちを中心に、加害から逃れにくくなるとして反対論も根強い。法制審はパブコメを経て法改正の議論に入るが、着地点は見えない。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年11月17日

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