絵本作家 なかやみわさん 息子よ、働く母の葛藤と誇りを感じて!
父はデザイナー 里山を駆け回った子ども時代が創作の種
両親と母方の祖父母、3つ上の姉の6人家族で育ちました。母は専業主婦で、父は自宅の敷地内にデザイン事務所を構えていました。何百色ものカラーペンが並ぶ父の仕事場が大好きで、先のつぶれかけたペンをもらってはお絵描きをしていました。
私も姉も、家の周りの原っぱや雑木林でのびのびと遊んで大きくなりました。里山を駆け回った子ども時代が創作の種になっています。会社勤めを経て、25歳で初めて絵本を出しました。
出版社勤務の夫 息子が生まれて分担が難しくなった
本を1冊一緒に作ったのがきっかけで、29歳の時に4歳年上で出版社勤務の夫と結婚しました。料理の苦手な私に、いつもご飯を作ってくれるような人です。本に関わる仕事をしている者同士なので話が合い、2人で出かけると旅先でも必ず書店に入ってしまいます。
ただ、16年前に一人息子が生まれてからは、家事や育児のすり合わせが難しくなりました。息子が熱を出したりすると、私が家で仕事をしていることもあって看病するのはほとんど私。「私も仕事してるんだよ。あなたは早退できないの?」って。すると、夫は平日関われない分、土日には食事を作り、息子の好きな電車で父子で遠出をして、私の仕事の時間を確保するようにしてくれました。
葛藤、願い…作品は働く親と自分へのエール
それでも、私の仕事が立て込むと、保育園にお迎えに行く時間が遅くなり、園に残っているのは息子一人、という日が続きました。自転車を飛ばして、園の閉まる時間ぎりぎりに一人きりで遊んでいる息子を引き取って…。息子は中学生のとき、「最初の記憶」がテーマの作文で「お迎えが最後になるのが寂しかった」と書いていました。
働く母であることを後ろめたく感じたこともあります。でも私の後ろ姿から、仕事への誇りも感じてほしい。息子が小さい頃に描いた「どんぐりむらのぱんやさん」(学研プラス)には、そんな葛藤や願いを込めました。同じように働く親と自分へのエールでした。
息子は息子、私は私 人生を尊重しよう
大事にしているのは、息子の人生を尊重すること。息子には息子の生き方がある。経験者として助言はするけれど、親として「こうしてほしい」とは言いません。高校1年になった息子は鉄道好きで、学校でも鉄道研究部に入っています。無理やり運動部に入らせる親もいますが、私は自分のイメージの枠にはめることはしたくないです。
その代わり、息子から「理想のお母さん」や、夫から「理想の妻」を押しつけられたくもありません。「料理はあまり上手じゃないけど、他のお母さんにはない、いいところもいっぱいあるからね」と伝えています。
なかやみわ
1971年、埼玉県生まれ。サンリオデザイナーを経て、福音館書店の月刊絵本「そらまめくんのベッド」で絵本作家デビュー。「そらまめくん」(福音館書店・小学館)、「くれよんのくろくん」(童心社)、「どんぐりむら」(学研プラス)の各シリーズをはじめ、作品多数。