学童から悲鳴「結婚できない」…指導員の半数が年収150万円未満
体力も知識も必要で、責任は重い
「夏休み中は子どもたち約20人分の昼食を作ったり、炎天下で一緒に体を思い切り動かしたり。体力もいるし、障害がある子もいるので知識も必要。責任の重い仕事です」。愛知県内の学童で正規職員として働く男性指導員(28)は話す。
仕事のやりがいは感じるものの、悩みの種は収入だ。朝8時から夜7時までのうち1日8時間、週5日働いて手取りは月約19万円。「将来、家庭を持とうとすると、転職を考えざるを得ない」
学童は、2017年の厚生労働省の調査では全国に約2万4千カ所。運営者は行政や保護者でつくる組織、社会福祉法人、NPO法人など、地域によって異なる。国と都道府県、市町村が費用の3分の1ずつを運営者に補助している。
子どもたちの活動を支援するのが、男性ら指導員だ。以前は資格はなかったが、15年に「放課後児童支援員」の資格ができ、40人程度の児童に対し2人以上の指導員を置く(うち1人は有資格者の支援員)との基準が設けられた。
年収の低さが人材確保に悪影響?
男性は学生時代にアルバイトで指導員になり、「子どもの成長を見たい」と卒業後もバイトを続け、15年に資格を取得して正規職員となった。しかし、給料は安く、家賃3万円のアパートに住むなど生活を切り詰めても、貯金はほとんどできていない。交際していた女性に「こんなに不安定で、低い給料では結婚できない」と言われたこともあるという。
愛知県内の別の男性指導員(39)は勤続15年目の正規職員で、手取りは約24万円。2人の子どもがおり、妻も正規の指導員だが現在は育児休業中。「早く妻に復帰してもらわないと、生活が苦しい」と打ち明ける。
14年に実施された「全国学童保育連絡協議会」の調査では、回答した週5日以上勤務している指導員約4300人の46.2%が年収150万円未満。年収の低さが、指導員の人材確保に影響しているという見方もある。夫婦で指導員をしている男性の学童でも、パートの指導員を募集しているが、適任者が見つからなかったり、長続きしなかったりで、「人手は常に足りない」という。
「誰にでもできる」仕事ではない。待遇改善を
指導員不足の解消に向け、内閣府の有識者会議は、給与の引き上げでなく、設けられて間もない有資格者に関する配置基準を緩和し、なり手を募りやすくすることを検討している。しかし、同協議会は「学童保育の質が落ち、指導員の社会的地位向上の流れにも逆行する」として、約20万人の反対署名を国会に提出した。
静岡大の石原剛志教授(児童福祉)は「指導員は『子ども好きなら誰でもできる』と思う人もいるが、学年が異なる子どもの間ではトラブルも多く、専門性が必要。育児中の女性がより働きやすい環境を整えるには、指導員のなり手を増やし、学童を充実させることも重要だ。国などの補助額を増やし、指導員の待遇を改善することも検討するべきだ」と指摘する。
学童保育とは
共働き家庭などの小学生が放課後や長期休みの日中などを過ごす。全国で約117万人の児童が登録、利用している。放課後児童支援員の資格は、保育士などの有資格者か、実務経験2年以上などの条件を満たす人が、都道府県が開く講座を受講して資格を取得する。指導員はパートを含め約13万人。
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