こんなにある!永田町の子育て〝非常識〟「国会議員が妊娠するのか」「女を捨てろ」〈ママパパ議連座談会レポート〉

(2019年1月5日付 東京新聞朝刊)
 子育て支援政策を決める場に当事者がもっといなきゃ―。東京新聞の子育てサイト「東京すくすく」で「超党派ママパパ議員連盟」のメンバーによるリレーコラム「本音で話しちゃう!」が始まるのに合わせて開かれた議連役員4人の座談会は、本音も交え、意気投合しながら和やかに進みました。(司会は小林由比・東京すくすく編集長、編集チームから坂田奈央、安藤美由紀、大野暢子、今川綾音、寺本康弘が参加しました)

議員の妊娠、出産は半世紀ぶりだった

―超党派ママパパ議連は、どんな目的で結成したのでしょう。

蓮舫 議連は通常、政策立案のために議員が集うものですが、ママパパ議連は「国会の中を変える」ことも目的です。

野田聖子 私たちよりも下の、今まさに幼い子どもを育てている各党の女性議員から「おかしいことがたくさんある。どうにかしたい」と相談されて。彼女たちは、永田町や国会を見るまなざしが、私たちよりも新鮮。みんな妊娠、出産、子育てをしながらどうにか必死で仕事をしているけど「必死ではなく、普通にできなきゃおかしい」と言われて、流行語じゃないですけど「そだねー」ってことで。ママは超党派ですから。自民党はこういうママとかないですからね。

野田聖子さん

橋本聖子 2000年に私が初めて妊娠した時は「国会議員が妊娠するのか!」って驚かれた。参議院では議員の妊娠、出産は初めて、その50年前に衆院議員でいたと。半世紀ぶりだったんです。それで、欠席届を出そうとしたら、理由を書くところに「出産」はなくて。「外遊」とか「事故」とか「病気」とかはあるのに。結局、「その他(突発的な事故)」っていう理由になりました。

橋本聖子さん

蓮舫 失礼な話です。

野田 私も、結婚も出産もダメだと思ってた。支援者や周辺から「男の仕事なんだから、女を捨てろ」と。バカみたいに信じて、40歳までやってきちゃった。

橋本 出産後、野田さんにも相談して「国会に保育所を」という議連をつくったんですよ。2010年にようやく、衆院会館に東京都認証保育所ができました。

蓮舫 女性のトイレ環境も良くない。今は本会議場の横は、男性トイレのスペースを半分女性用にしている。衆議院にいたっては上がオープンという驚くべき環境です。

高木美智代 話し声も全部聞こえちゃうのよね。

深夜国会…子どもを預けるところがない

―皆さん厳しい環境で働いてこられたわけですが、下の世代から声が上がった、というのは、今なお課題が多いということですよね。

高木 今も皆さん一番困っているのは、子どもを預けるところがないこと。参議院には今も保育所がない。参議院は今女性は2割いるのに。住民票が、選挙区にあるので東京で保育所に預けられないという問題もある。ママパパ議連は、参議院に保育所をつくるのも目標の一つです。

蓮舫 いまだに深夜国会もあり得る働き方も課題です。保育所や学童保育では対応できず、じゃあベビーシッターなのか、と若い議員たちは憤りを覚えている。私自身、「どうしてたんですか」って聞かれても「必死だった」って答えるしかない。

蓮舫さん

政策決定の場は「おじさんばっかり」

―昨年、幼児教育無償化の議論では、子育て中の親からも方向性に疑問が上がりました。凍結となった妊婦加算制度も、政府の意図と国民の受け止め方の乖離が浮き彫りになりました。国会で議論される政策と、子育て層のニーズにズレが出るのはなぜなのでしょうか。

野田 今回の幼児教育無償化も、一番の問題点は子どもに焦点が当たっていないこと。お母さんが働いていようと、お父さんが働いていようと関係なく、すべての幼児が対象であるべきです。それなら、幼児教育は義務化すべきだよね。おじさんばっかりで、子育て支援の主体となっている人があまりに政策決定の場に少ないし、今、子育て真っ最中の議員は若くて、もの申せない。

蓮舫 男女ともに仕事も子どもも諦めないことを当たり前にするのが政治の責任なのに、野田さんや橋本さんみたいに、ご自身の経験から私たちと考えを共有できる自民党の政治家は少ないと感じる。子育て世代であり、母である女性にもっと国会で活躍してもらうことが必要だし、ママパパ議連のように超党派の議員のまとまった意見を大きな声にすることで、ズレを少なくできるのでは。

高木 私も子育て期、地域活動をやっていて、会合に子どもを連れていけず困ったことが何度もあった。苦労してきたから、今の若いママパパ議員にはそういう苦労をさせたくない。

高木美智代さん

蓮舫 ただ、私たち国会議員の働く環境を整えることに関しては、保育所にしても待機児童問題が解決していないのに、「国会議員だけが特権だ」と批判を浴びがちです。

高木 世の中がここまでできているんだから国会も、という順番も、常に考えますよね。

橋本 国会に保育所をつくるときも、「自分のため」と言われるから、他の議員に動いてもらった。でも子どもを安心して預けられる場所がなければ、安定した仕事はできない。

野田 悩ましいけれど、社会と国会内の課題は連動している。政策決定の場にいるからこそ、きちんと環境を整備していくことで、社会全体に広げていかなくてはという空気をつくっていくこともできる。

蓮舫 小さい子どもの預け先が見つからない時、立憲民主党では党の会議に子連れOKです。ようやくそういう文化になりつつあります。

野田 女性議員の妊娠、出産にかかわる話としては、本会議での採決で代理投票ができるようにすることは進めた方がいいんじゃないかと思っています。憲法の規定で本人の出席が求められるという問題点はある。でもこのIT時代、方法はあるんじゃないかと思います。

子育て世代はSNSでも声を上げてほしい

―「私たちのニーズを国会議員は分かってくれるのかな」という思いを持つ子育て層は多いと思います。子どもにとって何が良いのか、という目線を持った議員がいることが大事だと感じます。

野田 子どもと生きながら、いろんな衝突があったり、活動に制約があったりするリアルな国会議員がいないと、現実の問題解決に近づけない。20年前は難しかったけれど、ようやく私たち、リアルなママとパパの集合体ができるようになったんだなと思う。

蓮舫 経験者には同じ思いを次世代にさせないという思いがある。各政党も、この議連の存在を認めているというのは、大きな第一歩だと思います。

高木 子育て世代には政治に参画してほしい。声をもらいたい。子育て中ってそれどころじゃなくて、仕事と子育てで毎日、いっぱい。それでも今はSNSなどもあり、声を届けてもらいやすくなっているので、ぜひ聞かせてほしい。地方議会などでも子連れ傍聴ができる環境整備やネット配信などをもっと進めるべきです。

野田 これから有権者、納税者になる人たちが質量ともにがっちりいてくれることは本当に大事なこと。自民でよく出てくる「伝統的家族観」って何?って思う。パラダイムが変わっているのだから、それに合わせた伝統的家族観をつくらないとね。

蓮舫 子育てというと小さな子どもだけをイメージされがちですが、保育、小1の壁、いじめ、学力、奨学金など、子どもが社会に出るまで親の不安や求める政策は移り変わっていく。それだけに、政策を求めるグループの規模は小さく、声も届きにくい。だからこそ、他の政策に埋もれないように声を上げる議員が必要。今、この議連は子育てをテーマにしていますが、介護の問題もある。そうした部分すべて、女性が中心軸だというのはそろそろ変えていくべきだという考え方は、各党のメンバー共通していると思います。

野田 男性議員も含め、当事者の若い議員がここでは「自分たちが主役」ということで、いろんな提案をしてくれる。次世代のための議員連盟だから、党を超えていろんな意見を出し合い、提言できればと思っています。

(敬称略)

のだ・せいこ

衆院議員(自民、9期)。1960年生まれ。岐阜県議を経て、93年初当選。2011年に長男を出産。前総務相・女性活躍担当相。

たかぎ・みちよ

衆院議員(公明、6期)。1952年生まれ。2003年初当選。党女性委員会副委員長。前厚生労働副大臣。子ども2人は社会人。

れんほう

参院議員(立憲民主、3期)。1967年生まれ。報道キャスターなどを経て2004年初当選。党副代表、参院幹事長。21歳の娘と息子の双子の母。

はしもと・せいこ

参院議員(自民、4期)。1964年生まれ。スピードスケート、自転車競技で五輪出場。95年初当選。参院党議員会長。6人の子の母。

◇「ママパパ議連」のメンバーによるリレーコラム「本音で話しちゃう!」はこちら

コメント

  • 能力のある女性が男性と同じような仕事をして同じような結果が出せるならそれで良いと思いますよ。 工事現場や原発で働く女性がいても良いし、化粧品売り場や下着売り場で男性が働いても良いと思います。 男女
     
  • 寡婦控除に腹が立つ。なぜ差別する?婚姻関係にある子供だけが、日本の子供なんだと、ひしひし感じる。