出産一時金42万円から50万円に増額検討 都心部の費用上昇に対応、それでも東京では10万円足りない

坂田奈央、川田篤志 (2020年10月28日付 東京新聞朝刊)
 政府・与党は、健康保険の加入者が出産した際に受け取る「出産育児一時金」を、現在の42万円から増額する検討を始めた。都市部を中心とした出産費用の上昇に伴う子育て世帯の負担を軽減する狙い。全国の平均額に基づき、50万円を目安に検討する。 

2009年以降は増額なし

 田村憲久厚生労働相は27日の記者会見で、一時金に関し「実態調査をしている。年末までに金額も検討していきたい」と、増額に向けた検討を認めた。

 出産育児一時金は1994年に創設され、支給額は当時の国立病院の平均分娩(ぶんべん)料を根拠に30万円に設定された。その後、出生数の減少による病院経営上の理由などで、1人当たりの出産費用が上昇。支給額も段階的に増額され、2009年に42万円となった。2015年にも増額が検討されたが、財源不足などで見送られた。

最も低い鳥取県は39万円

 国民健康保険(国保)中央会によると、2016年度の出産費用(正常分娩)の平均額は約50万6000円。都道府県別では東京都が約62万2000円で最も高く、最も低い鳥取県の約39万6000円と約22万円の開きがある。一時金の支給額は全国一律のため、出産費用が42万円よりも安い地方では差額分を得られるが、高額な都市部では不足分が本人負担となる。東京都では50万円に増額しても、まだ10万円以上足りない計算だ。

 こうした状況を踏まえ、与党内では50万円を軸とした増額を求める声が強まっている。

自民党内に議連を設立

 自民党の野田聖子幹事長代行は、今月のフジテレビ番組で「42万円では、ほとんどの都道府県の平均額をカバーしきれなくなっている」と語り、50万円以上への引き上げに取り組む考えを表明。野田氏と岸田文雄前政調会長は29日に、党内に「出産費用の負担軽減を進める議員連盟」を設立し、取り組みを推進する。

 公明党は昨年の参院選の公約で「50万円への引き上げ」を掲げ、今月には菅義偉首相にも提言した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月28日