不妊治療の保険適用が拡大 受診しやすくなりました〈どんぶり一家のマネー術〉

(2022年5月6日付 東京新聞朝刊)

 財子(ざいこ)さん(39)と会社員の夫の経男(つねお)さん(42)、長男税太(ぜいた)くん(4)、長女貨保(かほ)ちゃん(0)のどんぶり家。一家のお金の悩みにFP陽子さんが助言するコーナーです。第1金曜日掲載。

人工授精、体外受精、顕微授精など適用

 財子 妹夫婦が不妊に悩んでいます。今年4月から不妊治療が受けやすくなったと知り、どんな制度なのか私も知っておきたいのですが…。

 陽子 不妊の検査や治療を受けるカップルは5.5組に1組で、増える傾向が続いています。これまで多くの治療は保険適用外で、体外受精なら1回平均約50万円。出産を望んでいても、費用の負担が大きく、治療をあきらめる人もいました。そこで4月からは人工授精と体外受精、顕微授精などが保険適用に。1カ月の自己負担額に上限がある高額療養費制度も使えるようになりました。

 財子 保険適用は年齢の制限がありますか。

 陽子 体外受精と顕微授精は、治療開始時に女性が40歳未満なら子ども1人につき6回まで、40歳以上43歳未満は3回までが条件です。男性は年齢制限がないほか、人工授精も年齢制限の対象外です。

「強く推奨」「推奨」の治療法だけ対象

 財子 回数にも制限があるんですね。

 陽子 治療法についても、日本生殖医学会のガイドラインで「強く推奨」「推奨」とされたものだけが保険適用となります。

 財子 これまであった自治体の助成金はどうなるのですか。

 陽子 保険適用が拡大されたため、原則として従来の助成金制度は終了します。ただ、保険適用されない治療について、独自の助成金制度を設ける自治体もあるようです。

 財子 働きながらの治療は大変そうです。

 陽子 治療中は精神的、身体的な負担が大きく、働き方など職場の配慮が必要です。大企業だと、休暇制度を設けるなど、治療と仕事の両立支援に力を入れているところもあります。両立支援に取り組んだ中小企業の事業主に助成金を支給する国の制度もありますが、企業が十分に把握していない場合もあります。悩んだ時は、自分から会社に相談してみるとよいでしょう。

監修・八木陽子

 東京都在住。1男1女の母。出版社勤務をへて独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事をする。2005年、親子でお金と仕事を学ぶ団体「キッズ・マネー・ステーション」を設立。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う「株式会社イー・カンパニー」を設立した。著書に「6歳からのお金入門」(ダイヤモンド社)、「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)など。

※「どんぶり一家のマネー術」は毎月第1金曜に掲載します。次回は6月3日です。