澤穂希さん、現役時から「いつかは出産」見すえて”準備”
パフォーマンスのために生理周期をコントロール
―子育てはどうですか。
長女はよくしゃべり、何をしても楽しいです。子どもは泣いて当たり前。イライラせず、なぜ、泣くのかを考えるようにしています。半年に1度健康診断を、年に1度人間ドックを受けるなど、体調管理に気を使っています。
―現役時代も徹底していたそうですね。
練習も食事も試合から逆算して準備していました。女性は月1回生理があり、体調や気持ちの変化がパフォーマンスに影響します。体調を把握するため、20歳の頃から毎日基礎体温を測っています。トレーナーから「排卵日はホルモンの関係で、けがが増える」と言われ、いつもより準備や運動後のケアをしました。
―生理による体調変化で苦労したことは。
おなかが痛かったり、試合前に気持ちが前向きになれなかったりして鎮痛剤を使うこともありました。30歳の頃からは大事な試合に当たらないようピルを服用し、周期をコントロールしていました。
ピルの服用、米国では当然だった
米国でプレーしていた20歳の時、同僚は当然のように使っていました。日本代表の遠征時にチームドクターだった婦人科医の勧めや、服用していた先輩選手の波のないプレーを見て、帰国後に始めました。
―不安は。
生理痛を和らげたり、日数や経血量を減らしたりでき、メリットも多いと考えて決めました。服用初期には頭痛や吐き気などの副作用もありましたが、疑問がある時は、しつこいくらい医師に相談しました。試合日程を細かく伝えて飲み方を確認し、指示をもらいました。
―服用のきっかけは。
当時、「いずれは結婚して子どもがほしい」という目標、夢がありました。ピル服用は将来の出産も考えてのこと。(晩婚や少産で)生理が続くことが体の負担につながるため、排卵を抑えて子宮を休ませることもできると医師から聞きました。
今は女性医師も多い。一人で抱えず相談を
―選手としてピークの時に、将来の妊娠・出産を意識していたのですか。
実現するかしないかは別として、準備は必要だし大切だと思っていました。サッカーと同じです。医師に「ピルをのみ終えて3カ月は妊娠しやすい」とアドバイスされ、幸運にも引退後すぐ、その通りになりました。
―生理に悩む若いアスリートもいます。
私も10代のころ悩みましたが、恥ずかしくて友達にも言えませんでした。今は女性医師も多く、知識のある指導者もいる。一人で抱えず、相談してください。
―東京五輪や今後のサッカーへの思いは。
五輪には何らかの形でかかわりたいですし、できることがあれば、したいと思います。もう一度、強いなでしこジャパンが見たいですし、子育てが落ち着けば、サッカー協会のお手伝いなどができればと思います。
澤穂希(さわ・ほまれ)
1978年、東京都生まれ。93年、中学3年でサッカー日本女子代表にデビュー。主将を務めた2011年女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で初優勝し、自身も最優秀選手(MVP)、得点王にも輝いた。12年1月には国際サッカー連盟(FIFA)女子年間MVPを受賞し、ロンドン五輪では銀メダルを獲得した。15年8月に結婚し、12月に現役を引退。17年1月に第1子を出産した。