妊婦の栄養不足に気をつけて! 子どもが将来、高血圧になるリスク

(2018年11月3日付 東京新聞朝刊)

 東京大先端科学技術研究センターの研究チームは、妊娠中に母親の栄養が不足すると子どもが高血圧になるリスクが高まる仕組みをラットの実験で明らかにし、2日、米医学誌電子版に発表した。母親からの過剰なストレスホルモンで胎児の脳の高血圧遺伝子が活性化され、成長すると影響が表れるという。 

出生時は低体重、成長後は肥満の傾向も

 一般に妊娠中の母親は、ストレスホルモンの血中レベルが高くなるが、胎盤が胎児への流入を防いでいる。栄養不足だと胎盤の機能が弱まって過剰なストレスホルモンにさらされ、血圧を上げる遺伝子の働きが活発になると考えられる。

 実験では、餌のタンパク質を60%減らした妊娠ラットの子と、胎盤で分解されにくい人工的なストレスホルモンを投与した正常妊娠ラットの子を調べた。いずれも成長後に高血圧になり、血圧を調節する脳の視床下部で高血圧遺伝子が活性化していた。出生時は低体重だが、成長後は肥満の傾向も見られた。

 同大の藤田敏郎名誉教授(内科学)によると、第2次世界大戦末期のオランダで、母親の食事不足により胎児期に低栄養にさらされた子どもは成長後、高血圧のリスクが高くなることが知られていた。原因としてさまざまな仮説が立てられてきたが、人間でも今回の実験と同様な仕組みが働いているのではないかという。