大変な多胎育児、出産前から支えます「さいたまピーナッツクラブ」 双子や三つ子を育てたスタッフが交流の場を提供

藤原哲也 (2024年2月28日付 東京新聞朝刊)

ファミリー教室で種類の違う双子用ベビーカーをスタッフの案内で試しに扱う参加者=いずれもさいたま市中央区で

 双子や三つ子などの多胎育児に直面した家族を妊娠時から手厚く支援する団体がさいたま市内にある。名称は「さいたまピーナッツクラブ」。多胎育児を経験した約20人のスタッフが妊娠期に開くファミリー教室や、産後のサークル活動などを通じて悩み相談や交流の場を提供している。

不安だらけの多胎妊婦 助言で安心

 2月18日に中央区であったファミリー教室にはオンラインを含めて過去最多の13家族が参加した。双子用ベビーカーや2人同時にミルクを与えられるグッズなどに参加者は興味津々。専門家による基礎知識講座で「多胎妊娠に安定期はない」といった話に加え、スタッフによる体験談で「大変だけどかわいい」「頼れるものは頼って」との声や助言を聞くと、不安そうな表情も少し和らいでいた。

 夏に三つ子を出産予定の南区の斉木栄利佳さん(37)は「周囲に多胎のお母さんがいなくて不安だった。いろいろな助けが必要と実感した」。夫の佑介さん(38)も「不安の中身が分からないことも不安だった。育休取得のタイミングなどを知ることができたので考えないと」と真剣だった。

評判を聞きつけ、県外からの参加も

 9日の産後サークル活動では、10組の家族が子連れで参加し、和気あいあいとした雰囲気で風呂の入れ方や食事の与え方など特有の悩みなどで意見交換。1歳の双子を育てる女性(34)は「子どもを見ている時間が長いので公園でもママ友ができにくかったが、同じ立場で話ができるのは大きい」と喜ぶ。

スタッフと一緒に子どもたちと遊びながら交流を楽しむサークル活動の参加者たち

 現在ファミリー教室は年2回、サークル活動は月1回ペースで開催。このほかクリスマス会などの季節イベントがある。多胎サークルは埼玉県内に他にもあるが、熱心な活動が評判を呼び、市外からも参加者が集まる。今月は東京、千葉、神奈川からも参加があった。

横同士のつながりを意識 パパも変化

 切迫早産などによる早期入院や頻繁な授乳、オムツ交換などで心と体の健康維持が欠かせない多胎育児。代表の花俣美加さんは「とにかくママが孤独にならないように先輩ママや横同士のつながりを意識している」と強調する。さらに「参加すると、お父さんの意識も変わる。パパの手助けは必ず必要なので育休取得の意識も高い」と説く。

 忙しくてサークル活動になかなか参加できない親にも交流を広げようと複数のライングループを運営しているのもクラブの特徴だ。育児グッズを譲り合う情報交換などに加え、子どもが同学年の親同士やパパ専用といったグループラインが存在する。例えばパパ同士は車や住宅などハード面の話題や相談が多く、役立っているという。

出産後は余裕なくなる…事前に作戦を

 花俣さんは「多胎育児は出産後は調べる余裕がなくなるので、事前に作戦を練ることが大事。成長により悩みが変わるので、ある程度の年齢までつながり続けられたら心強いはず。地域でまだまだできることにこだわりたい」と語る。

 参加などの問い合わせは、さいたまピーナッツクラブのeメール= saitama.peanutsclub@gmail.com =で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年2月28日