〈坂本美雨さんの子育て日記〉8・心の成長 夫も感動

(2017年2月17日付 東京新聞朝刊)

お気に入りのタイツをはいて

面白い!1歳半

 おててー、と言って手をつないでくれるようになり、それがちゃんと言えていたり「おぺぺー」だったりして、かわいくてたまらない。片方の手を私、もう片方を夫がつないで歩いたり、そのまま彼女の手首を持ってビュン!と大きくジャンプさせたり。

 ふと、こんな絵に描いたような家族の光景を自分がやっているなんて…と急に俯瞰(ふかん)して見えて、信じられない気持ちもよぎる。こんな日がいつか来るぞと昔の自分に言ったとしても、絶対に信じなかっただろうなと思う。ありがとう、娘よ。

 それにしても1歳半とは、こんなに面白いものか…! いつだって現在が一番かわいく、面白いのかもしれないけれど。今回は夫に、心が動いた最近の成長は?とインタビューしてみた。そうすると、やはり私とは違う意外なところが彼のグッとくるポイントだったようだ。

夫の意外な視点

 以前から、食べ物の分け与えが娘の得意技。自分が手にしている食べ物をぐいぐい人に押し付けてくるのが食事やおやつ中の常なのだけれど、それは彼女が食べることに執着がないからで、自分が好きじゃないものを人に押し付けていることも多々あった。しかし最近は、自分が履くことが好きな靴下を親にも履かせてくれようとすることがよくあり、そうやって自分の好きなものを分け与えて、やってあげようとする精神が育っていることにちょっと感動した、と夫は言っていた。

 なるほどと思った。近頃はなんでも自分でやりたいし、やってもらっていることをまねして、人にもやってみたいだけかな…と思っていたけれど、夫は少し着眼点が違っていた。確かに驚くべき早さで心も成長している。彼女の優しさやユーモア、プライド、正義のようなものが、色鮮やかに浮き出てきている。

 いつからか、お風呂で遊ぶワニさんとアヒルさんにも、お風呂を出るときにバイバイするようになった。ショーウインドーのマネキンにも。バスの電光掲示板に流れて消えていく文字にまでバイバイしていたのには、思わずウルッときてしまった。

 彼女に見えている世界は、どんなものだろう。彼女の目を通して世界を眺め、彼女のことを理解したい。違う宇宙を秘めた存在と、少しずつ知り合っていきたい。(ミュージシャン)