〈坂本美雨さんの子育て日記〉49・デコボコしててもいいんだよ
「大きくなったらなにになる?」
よく娘と「大きくなったらなにになる?」という話をする。娘の周りにはいろんな大人がいる。ピアノを弾く人。髪を切る人。写真を撮る人。お料理をする人。コーヒーを淹(い)れる人。絵を描く人。お米を作る人。踊る人。得意分野を極めている人たちが多い。
違う言い方をすれば、偏った人たちだ。何かはとってもできて、何かはきっと恐ろしいほどできない(わたし自身がそれを痛感中)。でこぼこ、でこぼこ。その人だけの特別ないびつさは、近くにいる人は大変なこともあるかもしれないが、人間らしく、とびっきり魅力的だ。
そう感じているのに、自分の子どものこととなると、どこか欠けているように見えるとすごく不安になったり、時にはいら立ったりするものなのだろう。ボコの部分を直さなくちゃ、とやっきになってしまうかもしれない。だから今のうちから本人には、デコボコしてもいいんだよ、と知っていてもらいたいのだ。いろんな形をした大人と知り合って、無意識に感じ取ってもらいたい。こんな大人もいるんだな、ちゃんと愛されてるんだな、と。そしていずれ浮き彫りになってくる自分自身のデコとボコもちゃんと愛せるようになってほしい。
びっくり!「美容師」から急に…
何になりたいか聞くと、今まで一番多い回答は美容師だった。親しいヘアサロンに用がなくても立ち寄ってその仕事ぶりを眺め、三つ編みを教えてもらったりたまに掃除のお手伝いをしてみたり、身近な職業なのだろう。あとはお花屋さん、そしてママと一緒に歌う、も約束してくれたことがある。しかし、先日寝る前にまたなにげなく聞いてみると、「○○ちゃん、だれかのやくにたちたい」と言い出すではないか。「だれかをなおすひととか。たすけたいんだもん。けがしてるときとか」と。
びっくりしてしまい、アニメか何かで見たの?と聞くと、そうではないと首を振る。急にどうしたのだろう、そんな模範的なことを言い出すなんて…と半信半疑ながらも、他者との関わりにおいての自分の意義を考えだしたんだな…と感慨深くもあった。それはまた、肯定されたい、という欲求でもあるのかもしれない。
やりたいことは、全部やってみてほしい。カンフーをしながら、お花を売って、髪も切って、けがも治してほしい。この人のデコボコに触れていくのが楽しみでならない。 (ミュージシャン)
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