亡き妻と一緒に登った山 同じ場所で息子と〈清水健さんの子育て日記〉39
ママはしんどいって言ってた?
途中で少し立ち止まる時があっても、お互いに「下りようか」とは言わない。標高1125メートル、大阪府南東部に位置する金剛山。親子の意地(?)なのか、会話しない時間があっても、ひたすら登り続ける。上を見たらしんどくなるね。7歳の息子なりにいろんなことを考えて一歩ずつ。
すれ違う方に「あとどれくらいですか?」と僕が聞くと、「まだ半分ぐらいかな」。パパ、聞かない方がよかったよって(笑)。頂上付近に近づくと雪もあり、興奮して、元気を取り戻す息子。でも、ホッとした表情をしているのも僕にはわかる。しんどかったと思う。無理もしていたと思う。でも、どんな時も、こうやってふたりで「頑張ろうな!」、そう言いあえる親子でいたい。
頂上で食べたカップ麺に「今までで一番、おいしい!」と満面の笑みを見せる息子の姿に、急に思い立った登山だったけど、登ってよかったと思う。この金剛山は実は、妻とよく登った山。「ママはどうだった?」「しんどいって言ってた?」。僕からも「この場所で写真を撮ったんだよ!」なんて、その時の思い出をたくさん話せたのは、大きな大きな親子としての成長。
寂しさを追いかけるのではなく
2022年2月11日、7回目の命日。今年は特に心が揺れました。その理由は自分でもよくわからないけど、毎年、やってくる日がある。乗り越えるわけではなく、息子と一緒に、これからも手をあわせていきます。
誰よりも息子を愛した妻。その姿は今、隣になくても、同じ場所で、同じポーズで撮った写真が少しずつ増えていく。それを見て家族も喜んでくれる。寂しさを追いかけるのではなく、たとえ、写真であったとしても、3人でいるかのような場所を増やしていければなと思う。
「あともうちょっとだよ!」と僕に声をかけ、勢いよく登り出す息子。その後ろ姿にたくましさと、少しだけ、3人ではない切なさも感じてしまったけど、改めて親としての責任を強く意識しました。息子には想像しかできない。でも、息子とママの話ができる、こんなにうれしいことはありません。日に日に心も成長していく息子にパパが引っ張られています。
登山の翌日ではなく、僕は2日後に筋肉痛。でも、こうやって一緒に走り回ることができる今に、周りにいてくれるみんなに感謝です。思い出を積み重ね、毎日の妻への報告を増やしていきたい。(フリーアナウンサー)
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