〈坂本美雨さんの子育て日記〉79・娘とピースマーチへ 思いを表明することの大切さを感じてくれたら…

(2024年5月15日付 東京新聞朝刊)

渋谷で行われた反戦マーチにて(嶌村吉祥丸撮影)

クラスメートも親子で集まった 

 先日は娘と、友人のeriと仲間たちが主催するピースマーチへ出かけた。1時間半ほどかけて、渋谷から表参道をぐるっと一回り。SNSでパレスチナのことを発信しているうちに、だんだんとママ友たちから話題にしてくれることが増え、ピースマーチも誘ってみると「気になってた!」と言ってくれて、当日は娘のクラスメートたちも親子で集まった。

 配られたカラフルなお花を手に、みんなで掲げるポップなデザインの反戦ポスターや、スピーカーから流していたビートルズの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」が明るく柔らかな雰囲気を作り上げる。おとなも子どもたちも若者も年配者も、周りを眺めながらゆっくりとマーチする。先導する人に合わせて「平和がいちばん!」「FREE PALESTINE(パレスチナに自由を)」など、子どもたちと共に声高に街に響かせながら。

 ふだん仕事から仕事へセカセカと伏し目がちに歩く道のりも、ゆっくり進むと新鮮な景色に見える。道ゆく海外からの観光客も、応援の言葉を投げてくれたり、笑顔でスマホを向けてきたりする。

 途中で、今、物づくりをご一緒しているスタッフさんがレンタルバイクで駆けつけてくれた。私のライブ配信を見ながら位置を追ってきたという。先日彼に、制作していくにあたって、パレスチナのことは切り離せないという自分の思いを伝えたばかりだったので、彼の行動力に胸が熱くなった。

大事な権利で、自然なことなんだ 

 娘はといえば、友だちと話しながら「いつものデモより歩くほうが楽しい! けど、掛け声はいつものほうがリズムが良くて好きかな」などと言っていて思わず笑ってしまう。クラスメートは「パレスチナの子どもは私たちの子ども」と描かれたポスターをずっと高く掲げ続けていた。そんな様子に胸がいっぱいになった。だんだん私のほうがおなかがすいてきたけれど、子どもたちは文句を言わず最後まで歩ききった。

 後からママ友たちが「いつもは歩くのが嫌いなのに、最後まで歩けるなんて…」「本当にいい経験だった」「ガザのこと話すきっかけにもなった、ありがとう」と口々に感謝を伝えてくれた。

 こうして自分たちの思いをパブリックに表明するには、優しいやり方だってあるし、そちらのほうが伝わる場合もある。こういった表明をすることは守らなければいけない本当に大事な権利だし、自然なことなんだと、子どもたちが違和感なく感じられたら、本当にうれしい。

【前回はこちら】78・サバ美が奇跡の復活劇! 娘の涙と感謝の手紙

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。