学童「子ども同士は1m離れて」国の通知に困惑 感染症の専門家「言うだけの側の責任回避」 新型コロナ対策
「座席は離して交互 1時間に1回換気」
通知は2日付で、都道府県や各教育委員会などに対し、子どもの居場所として休校中の教室を使う際は、手洗いやマスク着用などの基本的な感染症対策の徹底を要請。さらに教室などでは座席を離して交互に座るなど、子ども同士が1メートル以上離れるよう求めている。昼食時も同様に周囲との距離を取る。
また1時間に1回、5~10分程度窓を開けて換気すること、ドアノブやスイッチなどは1日1回以上消毒液を使って清掃することとしている。
現場の声「どうしても子どもは近づく」
こうした内容に対し、小学校全35校で児童を預かる対応を取った東京都北区教委の担当者は「『友達ともっと遊びたい』『柔軟に対応して』と子どもや保護者から声も来ている。子どもの気持ちと感染防止とで悩ましい」と明かす。
文京区の民間学童保育施設「こどもの森せんだぎ」の横張寿希(よこはりとしき)代表は「できる限りの対策はしているが、学童は勉強だけをする施設ではないので、ボードゲームなどをすれば、どうしても子どもの距離は近づく」と話した。
厚労省の担当者は「(1メートル間隔の)お願いは感染予防の観点から例示したもので、実施しなくてはダメというものではない」と話している。
「無理なことを求めては、現場が疲弊するだけ」 学童での感染対策、専門家に聞きました
学童保育などでの感染対策はどうしたらいいか。感染症に詳しい沖縄県立中部病院の高山義浩医師(49)に聞いた。
ぜんそくや花粉症の子が排除されないように
-学童での対策で最も心掛けるべきことは。
症状のある子どもが来ないようにすること。各家庭で毎朝の検温と症状確認をし、発熱やせきなどの症状があるなら休ませる。
-鼻水が出ているだけでも休ませるべきか。
鼻水だけでも症状ありに分類されるが、大人たちが過敏になりすぎると、ぜんそくや花粉症などアレルギー体質の子どもたちが排除されることになりかねない。判断は親に任せるべきだ。
感染が広がった時に学童を糾弾するのは不幸
-本や遊具の共有で感染リスクはあるか。
子どもたちは直接触れ合って遊ぶ。それを制限できない以上、間接的な接触である本や遊具を制限しても意味ない。
-文科省、厚労省は子ども同士が触れないよう、一定の距離をとらせるよう求めている。
無理なことを求めてはいけない。現場が疲弊するだけ。言うだけの側は責任回避できるかもしれないが、それで現場に挫折感や罪悪感を与えてしまう。感染が広がった時に学童を糾弾することになれば不幸。親や地域は腹をくくってほしい。
激しく体を動かす遊びは、できるだけ屋外で
-子どもたちのコップは専用にすべきか。
紙コップや持参したマグカップを使うことが感染予防になる。施設に入る時や食事の時は原則として、手が汚れた時は手洗いを。あまり神経質になることはない。換気はしっかりする。
-室内で卓球やバスケットボールをしてもよいか。
あまり勧められない。屋内の閉鎖された空間で大声を出したり、激しい呼吸をすることにより、エーロゾルといってウイルスを含む小さな飛沫(ひまつ)を発生させた可能性が指摘されている。激しく体を動かすような遊びは、できるだけ屋外でやらせた方がよい。