学童「子ども同士は1m離れて」国の通知に困惑 感染症の専門家「言うだけの側の責任回避」 新型コロナ対策

(2020年3月6日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルス対策で急きょ始まった臨時休校に伴い、自宅で過ごせない小学生らを学校の教室などで預かる場合、感染防止のため、子ども同士の間隔を1メートル以上離すことなどを求める通知を文部科学省と厚生労働省が出した。ただ、子どもが距離を取ったまま長時間過ごすことは難しく、すでに子どもを受け入れる放課後児童クラブ(学童保育)でも困惑の声が上がる。 

「座席は離して交互 1時間に1回換気」

 通知は2日付で、都道府県や各教育委員会などに対し、子どもの居場所として休校中の教室を使う際は、手洗いやマスク着用などの基本的な感染症対策の徹底を要請。さらに教室などでは座席を離して交互に座るなど、子ども同士が1メートル以上離れるよう求めている。昼食時も同様に周囲との距離を取る。

 また1時間に1回、5~10分程度窓を開けて換気すること、ドアノブやスイッチなどは1日1回以上消毒液を使って清掃することとしている。

現場の声「どうしても子どもは近づく」

 こうした内容に対し、小学校全35校で児童を預かる対応を取った東京都北区教委の担当者は「『友達ともっと遊びたい』『柔軟に対応して』と子どもや保護者から声も来ている。子どもの気持ちと感染防止とで悩ましい」と明かす。

 文京区の民間学童保育施設「こどもの森せんだぎ」の横張寿希(よこはりとしき)代表は「できる限りの対策はしているが、学童は勉強だけをする施設ではないので、ボードゲームなどをすれば、どうしても子どもの距離は近づく」と話した。

 厚労省の担当者は「(1メートル間隔の)お願いは感染予防の観点から例示したもので、実施しなくてはダメというものではない」と話している。

「無理なことを求めては、現場が疲弊するだけ」 学童での感染対策、専門家に聞きました

 学童保育などでの感染対策はどうしたらいいか。感染症に詳しい沖縄県立中部病院の高山義浩医師(49)に聞いた。

ぜんそくや花粉症の子が排除されないように

 -学童での対策で最も心掛けるべきことは。

 症状のある子どもが来ないようにすること。各家庭で毎朝の検温と症状確認をし、発熱やせきなどの症状があるなら休ませる。

 -鼻水が出ているだけでも休ませるべきか。

 鼻水だけでも症状ありに分類されるが、大人たちが過敏になりすぎると、ぜんそくや花粉症などアレルギー体質の子どもたちが排除されることになりかねない。判断は親に任せるべきだ。

感染が広がった時に学童を糾弾するのは不幸

 -本や遊具の共有で感染リスクはあるか。

 子どもたちは直接触れ合って遊ぶ。それを制限できない以上、間接的な接触である本や遊具を制限しても意味ない。

 -文科省、厚労省は子ども同士が触れないよう、一定の距離をとらせるよう求めている。

 無理なことを求めてはいけない。現場が疲弊するだけ。言うだけの側は責任回避できるかもしれないが、それで現場に挫折感や罪悪感を与えてしまう。感染が広がった時に学童を糾弾することになれば不幸。親や地域は腹をくくってほしい。

激しく体を動かす遊びは、できるだけ屋外で

 -子どもたちのコップは専用にすべきか。

 紙コップや持参したマグカップを使うことが感染予防になる。施設に入る時や食事の時は原則として、手が汚れた時は手洗いを。あまり神経質になることはない。換気はしっかりする。

 -室内で卓球やバスケットボールをしてもよいか。

 あまり勧められない。屋内の閉鎖された空間で大声を出したり、激しい呼吸をすることにより、エーロゾルといってウイルスを含む小さな飛沫(ひまつ)を発生させた可能性が指摘されている。激しく体を動かすような遊びは、できるだけ屋外でやらせた方がよい。