子どもの便秘を防ぐには? 入園・入学の時期は要注意 生活習慣の3つのコツ、予防体操、”効く”指圧を解説

(2020年3月27日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

 生活リズムや環境が大きく変わる入学・入園の時期。新生活の緊張などから便秘になる子どもも少なくありません。今春は、新型コロナウイルス感染症対策による休園・休校も加わり、落ち着いた生活を送りにくくなっています。子どもの便秘の予防と解消のために、心がけたい生活習慣や声がけ、家庭や学校・園で簡単に取り組める体操や指圧を紹介します。

涙を流して苦しむ子ども「まさか便秘とは」

 「まさか便秘とは思わなかった」

 東京都新宿区の会社員男性(48)は、昨年9月、小学2年の長男(8)が夕食時に「おなかが痛い」と訴えるのを、「お菓子をいっぱい食べ過ぎたんだろうな」と受け取っていました。

 夕食を残して居間で横になっていた長男が、気付くと涙を流して苦しんでいます。午後10時すぎ、慌てて小児救急を受診しました。診察した医師はおなかを触るやいなや「便秘ですね」と一言。かん腸をすると、大量の便が出て、長男はスッキリした顔に。母親(47)は「排便のタイミングが夕方で、毎日は出ていないのは知っていたけれど、もう小学生だし、いちいち出たかどうかを聞くことはしていなかった」と振り返ります。

低学年までは「うんち出た?」の声かけを

 子どもの消化器疾患や腸内環境に詳しい順天堂大医学部の山城雄一郎名誉教授(78)は「子どもの成長に応じて子から親の目が離れ、子が自立してくるのは大事なこと。ただ、小学校低学年のうちは『今日うんち出たの?』と声をかけ、子どもの状態を把握して」と話します。

「新生活で緊張している子は便秘になりやすい」と話す順天堂大医学部の山城雄一郎名誉教授

 山城さんによると、便秘の定義は「週2回以内の排便」「週3回以上の排便があっても硬い便」であること。回数が出ていても、ウサギのふんのようなコロコロ状や、大きくてカチカチの便は要注意です。出るときに痛みが伴うと、トイレが嫌になり、さらに出にくくなるという悪循環に陥ってしまいます。

入学の時期、便秘になりやすい3つの理由

 小学校入学のタイミングで便秘になりやすい理由は3つあります。

①新生活を迎えて緊張している

②朝の生活リズムが変わって登校前に排便の時間が取れない。または、そもそも朝に排便する習慣がない

③学校のトイレ環境に慣れず、授業中に便意を催してもすぐには行きにくい

 学校で落ち着いて排便できれば問題ありませんが、「学校トイレを汚いと感じて敬遠したり、使い慣れない和式に戸惑ったりする子も増えています」と山城さん。そもそも5分しか休み時間がなければ、移動時間も考えると、ゆっくり排便できる状況とはいえません。

「朝の排便」を習慣づける3つのポイント

 山城さんは「朝、自宅で排便すれば、落ち着いて授業に臨むことができます」と指摘します。朝の排便を習慣化するには、どうしたらよいのでしょうか。3つのポイントを挙げています。

①朝、起きたら冷たい水を1杯(約200ml)飲む

 腸を刺激して活動を促します。朝のトイレのタイミングは、起きて水を飲んだ後、歯磨き・洗面中に便意を催してくる時が理想です。朝食後だと慌ただしくなり、落ち着いて用を足せないこともあります。

②夜は和食を心がけ、食物繊維をしっかりとる

<おすすめの食品>

・良質な脂身を含む魚:イワシ・サバ・サンマなど
 ※腸の善玉菌であるビフィズス菌を増やします。週4日は魚料理が理想です。

・食物繊維を多く含む食品:ブロッコリー・ホウレンソウ・オクラ・ゴボウなどの野菜や、こんにゃく
 ※腸の善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)が増え、腸の動きを活発にします。

③水分補給を十分に

 食事のたびに麦茶を出すなど、親からも促しましょう。

<1日当たりの水分量の目安>

・2歳ごろまで:体重(kg)×100ml

・3歳ごろ~小学生:体重(kg)×60ml〈冬〉~80ml〈夏〉
 ※体重25㎏の小学生なら、冬は1.5L、夏は2L前後

 山城さんは「おなかの調子が悪いと、勉強にも集中できない。脳と腸、ストレスと便秘は強い関係にある」と指摘。「新生活で緊張している子を、明るく学校へ送り出すのも親にできること。朝、慌ただしいからといって『早く食べて』『早く学校行きなさい』とせかさないよう、家庭でも心がけて」と助言しています。

1分で効果!体をひねる「便秘予防体操」

 適度な運動は、便秘の予防にも改善にも有効です。小児脳神経外科医の藤原一枝さん(74)は、担当した患者の便秘を解消した体験から、1分間でできる便秘予防体操をジャズダンスの心得のある友人の協力を得て考案。体をひねる動きを取り入れ、腸の動きを促します。便秘になった動物園のニシキヘビを描いた自作の絵本「ちょうかいちょうのキョウコちゃん」(偕成社)をモチーフにした体操で、YouTubeで動画を見ることができます。歌詞と楽譜も公開しています。

【右】担当の患者の便秘を治した経験をもとに、1分間でできる予防体操を考えた脳神経外科医の藤原一枝さん 【左】藤原一枝さん作の絵本「ちょうかいちょうのキョウコちゃん」(偕成社)。静岡市の日本平動物園で、ニシキヘビのキョウコちゃんが便秘になった実話をもとにしている

 「道具も不要で、ちょっとしたスペースがあれば年齢を問わずできます。短い時間でできるので、家庭だけでなく、保育園や幼稚園、学校でも毎朝、習慣として取り入れてほしい」

便が詰まっている時に効く「簡単指圧」

 藤原さんは「便が詰まっている時は指圧が効く」と勧めます。子どもをあおむけにして、息を吐き終えたタイミングで、重ねた手のひらでやさしくゆっくりと垂直に押します。おへそから時計回りに、少しずつ手の位置を移動させながら、左太ももの付け根まで順に押します。「かん腸や薬に頼らずに便を出す力を、子どもの頃から身に付けて」と話しています。

 藤原さんは、便秘予防の出前授業を無料で引き受けています。絵本の読み聞かせ・体操・指圧を、医師・体操担当・演奏担当の3~5人が出張して行います。問い合わせや申し込みは、藤原さんが所長を務める「藤原QOL研究所」(東京都墨田区)のファクス=03(5625)5151=へ、趣旨を書いて送信してください。

コメント

  • 一緒に暮らす3歳の孫が、この春から保育園が変わり、便秘気味なのが気になっていました。 できそうなことがいろいろ載っていましたので、試してみたいと思います。ありがとうございました。
     
  • たかが便秘されど便秘、結構気になっていました。特別なこととしてではなく生活上の問題として易しく(優しく)教えてくれています。これなら嫁に勧めても気軽に受け止めてくれるだろうと思います、有難い記事でした