「高校生以下はスポーツ施設の利用禁止」加須市のコロナ対策に批判 なぜ大人を優先するのか?
市側は「学校の部活中止に合わせた」「ウイルスを学校に持ち込ませない」
加須市は休業していた陸上競技場や野球場、テニスコート、市民体育館などのスポーツ施設を一部を除き今月1日から再開。その際、高校生以下は利用できないとし、各種スポーツ団体の長あてに郵送で知らせた。
加須市スポーツ振興課の担当者は「小中高校の部活が中止となっているのに合わせた。部活中止は運動での感染リスクがあるからだろうと判断した」と理由を説明する。市内の高校が部活を再開すれば高校生以下の利用も可能にするという。
また、「小中高校にウイルスを持ち込ませないという理由もある」とし、高校生にあたる年齢でも就職しているなど学校に通っていない子どもは現在も使用できるとする。
埼玉県教委は県立学校の部活を21日まで実施しない方針を示しているが、その理由について取材に対し、通常の学校生活に戻るための段階的な措置であり、部活での感染リスクが高いからではないと答えている。
市外の施設に流れるケースも…「むしろ感染リスクを高めてしまう施策」
茨城県も県のスポーツ施設を5月11日から順次使用できるようにした際、小中高校生に対しては臨時休校中だったことから利用自粛を要請していた。ただ、禁止ではなく「お願い」で、今月8日に県立学校が通常登校となったのに合わせて要請は解除した。
加須市民からは市の姿勢を疑問視する声が上がっている。市内のスポーツクラブで小中学生を指導する男性(30)は「高校生以下の子どもたちが運動する場所がどこにもない」と憤る。近隣自治体では高校生以下の利用を制限していないため、他のクラブは市外の施設へ出向いて練習しているところもあるという。男性は「市民が別の自治体の施設に行くことになり、むしろ感染リスクを高める施策だ。理由や意味のない禁止はやめてほしい」と訴えている。
加須市は3月にも、図書館など公共施設について、小中学生に対してのみ「入館お断り」との掲示をして、批判を受けていた。
社会体育施設の再開については、スポーツ庁がガイドラインを示している。同庁は「ガイドラインでは年齢や高校生だからといった理由の禁止は想定していない。最終的には自治体の判断になるが、ガイドラインを参考にしてほしい」と説明する。
専門家も批判「大人の都合の押しつけ」
埼玉大教育学部の高橋哲准教授(教育法学)の話 感染リスクはすべての人にある。子どもたちだけ制限の対象にするのは、公的な施設として年齢差別に該当する可能性がある。子どもが感染を広げるという具体的なエビデンス(科学的根拠)もない中、大人を優先し子どもは後回しというのは、大人の都合の押しつけ。子ども主体の考えではない。