伊豆大島の都立大島高バレー部 台風被害を乗り越え春高予選へ コロナで観光打撃の島に「いいニュースを」
体育館の屋根に穴、駐車場で練習
昨年9月上旬に関東地方を襲った台風15号で、同校の体育館は暴風による飛来物で屋根に穴が開き、吹き込んだ雨でぬれた床板がはがれ、使えなくなった。台風が過ぎた後、部員たちは駐車場のフェンスをネットに見立て、練習した。
島の子どもたちの多くは、小学校からバレーや野球に親しむ。同高バレー部も活動が盛んで「ひたむきな姿が応援されている」と、顧問の金子雄(ゆう)教諭(45)は話す。練習場所を失った部員のため、保護者や地域の人が町内の小中学校の体育館を借りてくれた。
ともに3年の菊地四季(しき)主将(17)と野口愛華(まなか)部長(18)は、小学2年からバレーを続ける。入学当初、部員は2人と3年生3人の計5人しかおらず、試合には島内の都立大島海洋国際高との合同チームで出場した。3年生が引退すると、2人で練習を続けた。
相次ぐ退部、マネージャーもコートに
昨年4月、菊地さんと野口さんの練習を手伝っていた同級生の千葉心幸(こゆき)さん(17)がマネジャーとして入部。新1年生7人も加わり、単独チームで試合ができるようになった。
だが昨秋以降、1年生3人が相次いで退部。それまで吹奏楽一筋だった千葉さんは自らもコートに立つと決め、今年2月の公立高校大会に選手として初出場した。チームは支部大会の決勝トーナメントに進み「スポーツで初めて勝った」と喜びを感じたという。
3月初めから5月末までの休校中は、LINEのグループで個人練習の内容などを共有。時折誘い合ってビーチバレーでボールの感触を確かめた。菊地さんは「小さい島なので、一人で走っていてもどこかで部員に会えるのも励みになった」と振り返る。
試合結果は防災無線で島民に知らせる
インターハイ予選や都高体連の試合が中止になっても練習を続けた。「みんなでバレーをすることが単純に楽しいのと、強くなりたかったから」と野口さん。7月に入り、例年9~11月に上位校のみで行われる春高バレーの予選を、特例で全チーム参加で開くとの知らせが届いた。
修復を終えた体育館は学校の決まりで午後5時までしか使えないが、保護者らが確保してくれた小中学校の体育館でさらに汗を流す日々。大学進学を希望する野口さんと菊地さんは、受験モードに入った同級生を見て焦りも感じながら、「自分ができることを短時間でも集中してやる」(菊地さん)と前向きだ。千葉さんは選手兼マネジャーとしてスポーツの楽しさを知り、関連の専門学校への進学を目指す。
大会は無観客で行われ、保護者も観戦できないが、試合結果は防災無線で島中に伝えられる。過疎化や高齢化と、産業の衰退で人口減少が進む島は、コロナ禍で観光業も打撃を受けている。「島にいいニュースを」。10人の部員の意気込みは熱い。