教室にいながらシンガポールへ 葛飾の小学校でオンライン修学旅行
大型モニターにマーライオン「でかい」
「マーライオンだ」「思ったよりでかい」。教室にある65インチ(約165センチ)の大型モニターに、シンガポールの観光名所が映し出されると、子どもたちから歓声が上がった。実物は高さ8.6メートル。画面を通しても分かる迫力に、素直な感想が漏れた。
同校では本来、昨年6月に栃木県日光市の林間学校に2泊3日の修学旅行を予定していた。中止となって落ち込む児童を励まそうと、PTA会長の風巻宏さん(53)らが発案し、オンライン修学旅行をボランティアで手伝っているシンガポールの日本人学校教諭、片野祐斗さん(26)に協力を打診した。
片野さんは子どもたちの目と耳となって、カメラを構えながら街を巡った。その映像と音声がZoomを通じて、教室の大型モニターに流れる仕組みだ。
現地の教諭が協力 子どもとの交流も
現地は気温26度。半袖の人たちが行き交い、ツアー冒頭から異国の雰囲気を感じさせた。片野さんはシンガポールが多民族社会であること、セブン-イレブンやモスバーガーなど日本でおなじみの店が並んでいることなどを説明しながら進んだ。
双方向のやりとりができることもオンラインの大きな利点だ。子どもたちはただ景色を眺めるだけでなく、シンガポールについての事前学習の内容を基に、疑問に思ったことをその場で片野さんにぶつけた。「本当にゴミは落ちていないの?」「マンホールの形は?」との質問に、片野さんはカメラを足元に向け道路の様子を映して答えた。
片野さんは通り掛かった現地の子どもを呼び止め、「出演」を依頼。教室から代表の児童が英語で「日本の印象は?」と尋ねると、「すしやラーメンが好き」と答えが返り、教室中が沸いた。
「コロナだから実現できる」思い出を
4クラス、計136人の6年生は各教室のモニターで同じ映像を眺め、1時間半の旅行を終えた。
別のクラスの代表として、現地の人に日本を訪れたことがあるかを聞いた吉野隼太君(12)は「緊張したけど、外国の人としゃべることはあまりないので良い経験になった」と満足そう。
PTAの風巻会長も教室で見守った。「生き生きとした子どもたちの様子に感動した。コロナのせいで何もできなかったではなく、コロナだったから実現できたという思い出を作ってあげたかった」と笑顔で話した。