子ども時代の「ジャンプ」が高齢期の骨粗しょう症を防ぐ 骨量を増やすには身長が伸びる思春期前が最適期
「骨への垂直方向の荷重」で骨量が増加
人気グループEXILE(エグザイル)のヒット曲「ライジングサン」のリズムに合わせ体操着の園児たちがジャンプを繰り返す。東京都台東区の蔵前幼稚園。5歳児の2クラス約70人が、体育館の床に引いた長さ数メートルの線をまたいで足をクロスさせたり、スクワットの動作を入れたりする「リズムジャンプ」を楽しんだ。この日は約40分間で6種類のジャンプを練習。伊藤隆園長(66)は「運動能力の向上と社会性、集中力を高めるのが狙い」と話す。
リズムジャンプは美作(みまさか)大(岡山県)児童学科准教授の津田幸保(ゆきやす)さん(47)が2010年に考案。同園は数年前から月に4回程度続けている。津田さんは「骨に対して垂直方向の荷重がかかる運動は骨量増加に貢献でき、高齢期の健康に役立つ」と指摘。伊藤さんも「体を動かすことを好きになってほしい」と期待する。
調査で判明 スポーツ歴が高齢期に影響
鳥居さんらは2018年10月から翌年4月にかけて、ソフトバレーボールサークルに所属する首都圏在住の64~85歳の女性80人(平均72.2歳)を対象に調査。全身の骨密度などを測定したり、過去の運動歴などを聞いたりした。
小中学生時代に部活動など週1回以上のスポーツをしていた人を「運動群」、していなかった人を「非運動群」に分類。運動群は中学時代にバレーボールやテニスをしていた人が多かった。さらに、非運動群を「小中学校時代の体育が好きだった」人と「嫌いだった」人に分けた。
この3群で骨粗しょう症の治療歴がある人を除いて骨密度を比較。20~40歳程度の健康な女性の骨密度を100とした指標で、運動群(55人)は89.5%、体育好きな非運動群(12人)は87.2%だったのに対し、体育嫌いの非運動群(6人)は79.2%と有意な差があった。80%未満は、骨粗しょう症の手前の骨減少症と診断されるレベルという。
同年代の女性の骨密度と比べた場合も同じように、体育嫌いの非運動群と、その他2つの群の女性とは有意な差が出た。
栄養と骨への刺激 「跳んだりはねたり」
鳥居さんによると、骨量を増やすには栄養と骨への刺激が重要で、ジャンプ運動が効果的。身長が伸びる思春期前(初経前、小学6年前後)は運動で骨量を増やす最適期で、「ここで骨量をできる限り増やすことで、高齢期に高い骨密度を維持して骨粗しょう症になりにくい体をつくることができる」。具体的には、乳製品などでタンパク質やカルシウムを十分摂取し、ゴム跳びや縄跳びなど、遊びや体育で「跳んだりはねたり」するのがいいという。
骨粗しょう症になると骨がもろくなって折れやすくなる。特に高齢者は要介護や寝たきりになる危険が増す。スポーツ庁の2017年度の調査では、中学生女子の21.5%が「スポーツや運動が嫌い」と答えた。鳥居さんは「運動を楽しむことが大切。体育が嫌いになるような授業をしないでほしい」と訴える。
高齢になっても無理なく運動を継続することも勧める。「歩く距離や速度を上げるなど日常より少し負荷を掛けることで、骨粗しょう症予防になる」
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