糖尿病は子どものころから予防しよう 1型と2型の違いは? 食事と運動のポイントは?

(2021年11月14日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる
 身近で深刻な病気である糖尿病は世界で増え続けています。糖尿病患者が新型コロナウイルスに感染すると重症化のリスクが高いことも分かってきました。糖尿病には生活習慣とは無関係に発症する1型と、運動不足や過食による肥満、加齢などが原因となる2型があります。2型糖尿病に罹患(りかん)しないためには小さいころからバランスの良い食事と適度な運動をする生活習慣を身につけることが大切です。基礎知識と予防法をまとめました。

糖尿病とは 血糖値の高い状態が継続

 糖尿病とは、身体を動かすエネルギーとなるグルコース(ブドウ糖)の血中濃度、つまり血糖値が高い状態が継続する病気だ。尿に糖が出るのは症状の一つ。糖尿病は、血糖値を下げる作用を持つインスリンというホルモンの分泌が不足したり、効力が落ちることにより発症する。

図解 正常な糖の取り込みと、1型糖尿病、2型糖尿病の例

若い人に比較的多い「1型糖尿病」 生活習慣とは無関係

 1型糖尿病の原因は、膵臓(すいぞう)のβ細胞から分泌されるインスリンの不足だ。治療の中心は不足したインスリンの補充となる。生活習慣とは無関係で、思春期までに発症することが多く、適切な治療を行えば、糖尿病をもたない子どもと同様の生活を送ることができる。

 日本では比較的少なく患者数は10万~14万人と推定される。18歳未満で発症した場合、公的補助制度があるが、20歳未満まで。生涯継続した治癒が必要なため、経済的な負担減を求める声は大きい。

1型糖尿病のプロ野球選手

 2021年に引退表明した阪神タイガースの岩田稔選手は高校生のときに1型糖尿病を発症し、治療をしながらプロ野球選手として活躍した。引退会見では「僕がプロ野球の世界で16年も勝負できたんで、1型糖尿病でも何でもチャレンジできる!」と語った。

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ヤクルト戦で4年ぶりの完投勝利を挙げ、ウイニングボールを手に笑顔を見せる阪神・岩田投手=2019年4月18日、神宮球場で

中高年に多い「2型糖尿病」 肥満などの生活習慣が原因に

 2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足、肥満といった悪い生活習慣、ストレス、加齢などが原因で発症。日本人は欧米人に比べて軽度の肥満でも発症しやすい。中高年に多い病気。徐々に進行するため症状が現れにくい。治療は食生活や運動で体重を減らすことが中心となる。食生活の改善と運動を行っても血糖値が改善しない場合には、血糖を下げる薬を使って血糖値をコントロールすれば健康な人と同じ生活を送ることが可能だが、高血糖が続くと徐々に合併症が進行する。

イラスト 肥満、運動不足、過食、ストレス

深刻な合併症

 2型糖尿病では高血糖が続くとさまざまな臓器に障害が生じ、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、がんなどの病気の発症や進行につながる。

図解 脳梗塞、心筋梗塞のリスク比

子どものころから糖尿病を予防するには?

 子どものころから糖尿病を予防するには、炭水化物、タンパク質、脂質の3大栄養素をバランス良く摂取することが大事。野菜の摂取、ゆっくりかんで食べる、欠食しない、インスタント食品・ファストフードなどを避けることも大切だ。

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食べるとよい食品「まごわやさしい(豆、ごま、わかめなど海藻類、野菜、魚、シイタケなどキノコ、イモ類)」などバランスのよい食事をとることの大切さを学ぶ児童=2021年8月、石川県宝達志水町で

 運動はインスリンの効きめ(インスリン感受性)を高め、血糖コントロールをよくし、長期的にみると内臓脂肪の蓄積、高血圧などのリスクを低下させる。2型糖尿病の発症率に関しては、少なくとも週1回以上運動する人は、かかる確率が約30%も低下するといわれている。発症後も有効だ。

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運動が苦手な児童を対象にした「子ども運動チャレンジ教室」。投げる、走るなどの基本動作を学び、スポーツを楽しんだ=2021年8月、岐阜市で

 2021年段階では、子どもの糖尿病が増えているというデータはない。しかし、直近の調査では肥満傾向児は増加傾向にあり、将来的な2型糖尿病の発症が懸念される。

子どもは「肥満・やせ」ともに増加傾向

 2020年度「学校保健統計調査」によると、肥満傾向児の割合は調査開始時より増加していたが、21世紀になり減少に転じ、近年は横ばいだった。2020年度はコロナ禍で調査期間が異なり、過去の数値と単純に比較できないものの、再び増加に転じた。また高度肥満傾向児(肥満度50%以上)の割合も決して低下していない。

 一方、糖尿病には関連しないものの、やせ傾向児の割合は横ばいが続いていたが、近年は増加傾向にあり、体格の二極化がみられる。

グラフ 肥満傾向児と痩身傾向児の出現率の推移

※グラフは算出方法が変わった2006年度から。 肥満度=[(実測体重-標準体重)÷標準体重]×100(%)

コロナ禍で低収入世帯ほど食環境が悪化

 国立成育医療研究センターと新潟県立大の調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行下で初の緊急事態宣言が出された2020年4月から5月、バランスの取れた食事を摂取できていない子どもが増え、感染拡大後は保護者の負担感が増えたことが分かった。世帯所得が低い家庭でより格差が拡大していた。一部の学校給食が中止されたことの影響もみられた。

図解 緊急事態宣言下および前後にバランスのよい食事をとれていた子どもの割合

東京都の学校検尿・糖尿病検診では…

 1975~2015年の東京都学校検尿・糖尿病検診で発見された2型糖尿病は、小学生64人、中学生237人の計301人。全研究期間の受診学童10万人当たりの年間2型糖尿病発見率は、小学生0.8人、中学生6.41人と中学生のほうが高かった。

家族に2型糖尿病の人がいたら太っていなくても注意を(浦上達彦=日本大学教授、日本小児・思春期糖尿病学会理事長)

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日大教授の浦上達彦さん

 2型糖尿病は大人に多く、子どもには少ないといわれていましたが、最近では子どもの肥満の増加に伴って、2型糖尿病をもつ子どもの数も全世界的に増えています。特に近年のコロナウイルスの流行にともなって、外出したり運動する機会が減って、さらに家でスナック菓子などのおやつ、夜食をとることが多くなったので、今後さらに子どもの肥満と2型糖尿病の数が増えるのではないかと心配されています。

 2型糖尿病は、単に食生活が悪かったり、運動不足だけが原因となるのではなく、両親や家族の中に同じく2型糖尿病をもつひとがいる場合には、子どものころから2型糖尿病になる確率が高くなります。したがって、家族の中に2型糖尿病のひとがいる場合には、あまり太っていなくても子どものころから食習慣、生活習慣に十分気をつける必要があります。

 最近になって、肥満と同様にやせすぎている子どもの割合も増えてきました。いずれの場合も、夜型の生活になって、朝なかなか起きられず朝食を抜かしたり、偏食が多かったり、運動せずに家でテレビゲームなどして過ごす時間が多いようです。標準的な体重と身長は、健康でいることの一番のバロメーターであり、とても大切なことです。

 子どものころからバランスよい食事を3食しっかりとり、早寝早起きの習慣を身につけ、適度に運動をすることは、心身ともに健康で過ごす最も大切な要素です。生活習慣は小児期に身につき、2型糖尿病を主とした生活習慣病(コレステロールの異常や高血圧、肝臓機能の障害)は小児期にすでに発症していると、大人になってさらに悪化します。一生を通じて健康でいられるよう、皆さんも食習慣と生活習慣の改善に心がけてください。

生活習慣の改善に大切なこと

  1. 夜型の生活でなく、早寝早起きの習慣を身につける
  2. バランスよい食事を3食しっかりとる
  3. 室内娯楽を少なくして、適度に運動する
  4. 身につけた生活習慣をおとなになるまで続ける

制作:サンデー版編集部 安藤美由紀
出典・参考文献:「患者説明にそのまま使える/不安なパパ・ママにイラストでやさしく解説 こどもの糖尿病と治療」(浦上達彦編著、メディカ出版)、「運動・からだ図解 糖尿病・代謝・内分泌のしくみ」(小田原雅人監修、マイナビ出版)、日本小児科学会、厚生労働省、糖尿病ネットワーク、日本小児内分泌学会などのホームページや資料

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