日本脳炎ワクチンが不足しています 4回のうち最初の2回を優先 念のため「虫よけ対策」徹底を

植木創太、細川暁子 (2021年4月13日付 東京新聞朝刊)
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ワクチン供給不足による案内の遅れを伝える厚労省のホームページ

 蚊が媒介する日本脳炎ウイルスのワクチンが国内で不足している。昨秋、メーカーの一つで設備トラブルが発生。生産が一時停止したためだ。標準的に、3歳で2回、4歳で1回、9歳で1回―と計4回の接種が推奨されているが、本年度は十分な供給量を確保できそうにない。免疫がない子どものため、国は最初の2回を優先するよう自治体などに呼び掛けている。 

ブタ→蚊→人 0.1%~1%が重い症状に

 3月上旬、間もなく3歳になる娘のため、日本脳炎の予防接種を予約しようとした名古屋市内の30代女性。かかりつけ医から「供給状況が不安定なので少し待ってもらうかも」と言われ驚いた。別の医院に問い合わせたが、既に予約でいっぱい。結局、かかりつけ医で順番を待つことにしたが、時期は未定で「不安を感じている」と話す。

 日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖。ブタの血を吸った蚊に刺されることで感染する。大半は無症状だが、100~1000人に1人の割合で脳炎などの重い症状が出る。そうなると、致死率は2~4割にも。子どもの場合、回復しても半数に神経の後遺症が出るとされる。

 蚊の活動が活発な夏から秋の発症が多く、日本では1960年代まで年間数千人の患者が出ていた。しかし、現在は年間10人程度で推移している。ブタの飼育管理が確立され、蚊が産卵する水田も減ったためだ。もう一つ、1995年からワクチンが公費で受けられる定期接種になったことも大きい。発症リスクを75~95%減らすというデータがあり効果は高い。

国内シェア8割のメーカーで設備トラブル

 このワクチンで国内シェアの8割を占める阪大微生物病研究会(ビケン、大阪府)でトラブルが発生したのは昨年11月。約1カ月にわたり製造が止まった。国内にメーカーは2つだけで、もう一社が増産を進めるが、年間供給量は前年比で約2割減、4月から12月ごろまでは半分程度に落ち込むとみられる。

図解 日本脳炎ワクチン不足への対応

 厚生労働省は1月、各自治体に対し、供給が安定するまで、計4回の接種のうち最初の2回がまだの人、3、4回目でも定期接種の対象期限が迫っている人を優先するよう通知。4歳、9歳向けに市町村から郵送していた3、4回目の接種の案内も来年度へずらす。対象者が半分になれば何とかまかなえる見通しだ。

3、4回目が遅れても「大きな影響はない」

 後の2回の接種が通常より遅れてもいいか、不安な保護者は多い。しかし、ワクチンに詳しい名鉄病院(名古屋市)の予防接種センター長、菊池均さん(57)は「大きな影響はない」と説明する。

 菊池さんによると、最初の2回でウイルスに対する免疫はできる。3回目はそれを高め、4回目は長く持続させるのが役割のため、1~2年延ばしても心配はない。加えて、国内はウイルスが流行している状況でないことも挙げる。

接種するまでは「虫よけ対策」徹底しよう

 ただ、ウイルスを持った蚊の発生は国内で毎年報告されている。参考になるのが、国立感染症研究所のホームページにある各都道府県のブタの抗体保有率、つまり感染状況だ。患者はブタの抗体保有率が8割を超える自治体や周辺が多いといい、多くが関東以西。居住地や外で活動する地域が8割を超えているなら、1、2回目は6月までを目安に接種するようにしたい。

 菊池さんは「ワクチンが全くないわけではないため、いつ打てるかを繰り返し相談してほしい。接種するまでは虫よけ対策を徹底することが大事」と訴える。

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